何なんだこれは!?
一気に読んだ。
病院の受付待ちで読み始め、診察に呼ばれても数秒頭が上がらず、診察中は常にそわそわ気味で。
薬局前で居ても立ってもいられず立ったまま読みふけり、
邪魔になってしまったので急いで近くの喫茶店に入って最後まで読んだ。
第二十七回鮎川哲也賞受賞
新基軸のクローズドサークル。
魅力的なキャラたちが織りなす奇想と本格が融合したエンタメ・ミステリ。
今村昌弘 「屍人荘の殺人」
- 作者: 今村昌弘
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2017/10/12
- メディア: 単行本
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凄まじい勢いで一気読みさせられた。
とりあえず受けた衝撃を少しでも伝えるために、雑文感想
=>続刊が出ました
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あらすじ
くそったれ。
これじゃ紫湛 荘というより
屍人 荘じゃないか。
神紅大学ミステリ愛好会。
それは神紅大学ミス研の
今の所、部員は二名。
会長の明智恭介は「神紅のホームズ」と呼ばれる変人である。
真にミステリを愛する彼は、日々謎や事件を求めあらゆるところにちょっかいを掛け、実際にいくつかの事件を鮮やかに解決した実績を持つ。
相棒はワトソン役の葉村譲。
彼はミス研のお粗末さに落胆していたところを明智にヘッドハントされた新入部員。
3人目の入会予定者は今のところいない。
明智の次なる「謎解き」ターゲットは、いわくつきの映画研究会夏合宿。
映研に何度も参加を頼み込んでは断られる明智と、その顛末を呆れながら聞いていた葉村の前に、ある日美少女が現れた。
「取引をしよう。君たちを映研の合宿に連れて行ってあげる。」
彼女は剣崎比留子と名乗る。
剣崎比留子といえば探偵少女として名を馳せ、幾多の刑事事件を解決し警察にも司法にも顔が利く生粋の名探偵ではないか。
斯くして二人のホームズと一人のワトソンはそれぞれの思惑を背負って映研合宿へと参加を果たす。
そこには不穏な空気が漂う参加者たちの姿があった。
そんな中、彼らの与り知らぬところでとある陰謀が始まっていた。
合宿所から程近くで開催されている音楽フェスに潜り込んだある男が長年の計画を実行に移す。
そして起こる惨劇、思いもしなかった事態。閉じ込められる合宿メンバー。
緊張と混乱の一夜が明け、メンバーの一人が密室で惨殺死体となって発見される。
そして幕を開くチグハグな連続殺人。
果たして葉村たちは閉ざされた紫湛荘から生き延びることが出来るのか。
物語の語り部はワトソン役の葉村譲です。
大学のホームズとワトソンコンビが、ヒロインと出会い事件に赴く。
1ページ目に合宿所たる紫湛荘の見取り図が描かれてて、「ああ館ものだなぁ」って思うわけですよ。
そりゃ綾辻先生の館シリーズは全巻読んどりますし。
館の見取り図。大学ミステリ研のホームズとワトソン。学生たちが一つ下に集う合宿。研究会がひた隠す一年前に起きた事件。
いやぁ、古典的!王道!でも館のクローズドミステリにするには携帯もつながっとるわ道幅も大きいわ、十角館みたいに孤島でもない・・・・・・・
と思って読み進めたら、いやまじでビビらされた。
まさかこう来たか、と。
それでクローズドになるのか!と。
一日目の夜から一気に世界が変わり、サスペンス感がマシマシになります。
一気読みですよね。
もう。
文章が読みやすいとか、ヒロインが可愛いとか、エンタメ感満載で続きが気になるとか。
もうそういった要素が立て続けに降ってきて、止まる暇がありませんでした。
エンタメでミステリでサスペンスで、本格で奇想天外
本格ミステリエンタメです。
エンタメマシマシでサスペンス要素スリル要素マシマシなのに、王道にして基本を抑えた本格ミステリです。
これはホントびっくりした。
ココまでエンタメに寄らせているのに皮を取っ払ったらココまで王道ミステリを描くのかと。
奇天烈なアイディアが整然と整った論理の元に、現実感のある本格ミステリと完璧に融合しています。
一人目の犠牲者は顔が潰されてるんですよ。
入れ替わり疑うじゃないですか?
色々な面で違和感漂うチグハグな殺人現場なんですよ。
もう、「なんでそれをそうやった?」ってなるんですよ?
挙句の果てに地の文で語り部が超意味深な発言するんですよ。
全員疑わしいのに、さらに主人公まで疑わしくなるじゃないですか?
こんなとっちらけた諸々が最後に全て回収され、奇天烈だと思ってた舞台設定があらゆる意味で「意図」を帯びてくる。
舞台設定から何から何までが美しいまでに腑に落ちて、論理が整然と立つんですよ。
美しい。
美しいまでの本格ミステリ。
ネタバレできないのが辛くて仕方ないけど、本当に舞台設定が秀逸。
ココまで奇想天外な常軌を逸したエンタメ設定の中で、ココまでしっかりしたミステリを描くのかと。
読む手が止まらなかった。
そして終わり方まできっちり因果の中に含まり美しいという。
タイトルのXXX荘の殺人(〇〇館の殺人)ってありきたりな名前から予想もつかないレベルで、ココまで振り回してくれるともうね。
夢中で読みました。
美人ぞろいの登場人物内でも、一際輝くヒロインがくっそかわいい
ヒロイン剣崎比留子が可愛い。
めちゃくちゃかわいい。
これだけはまずはじめに伝えたかった。
主人公の葉村やアクセル役の明智、合宿に参加するメンバー(とくに高木さん)も魅力的ですが、やはりヒロイン・剣崎の魅力が群を抜いてます。
証拠集めパートの「取引しよう」には萌え狂いました。
膝枕してほしぃ・・・・(*´∀`*)
私だったら即座に働きますよ( ´∀`)bグッ!
途中で明かされた「彼女が名探偵でなければならない理由」も素晴らしかった。
合宿メンバー(特に女の子勢)の描写といい、キャラの掘り下げがうまい。
明智の存在感も素晴らしかったし、語り部たる葉村の葛藤も良かった。
特に最後のシーンな。
剣崎の宣言からの後日談シーン。
収まるべきに収まったって感じで、何よりもミステリ愛好会の続編が俄然読みたくなってくる。
ともすればわかりにくくなる登場人物を、途中で「わかりやすく分類」してくれたのも嬉しかった。
あれで、名前が出たらすぐに「あ、こいつか」ってわかるようになったし。
あのギミックと配慮は非常に助かります。
ミステリで人が多くなると最初の登場人物一覧と見比べなきゃいけなくなるからね(´・ω・`)
その御蔭で参加者メンバーもキャラ立ちしてたと思う。
犯人の顛末や被害者の生前の独白なんかも世界観に一役買っていたし。
特に様々なものに振り回されながらも自分らしくあろうとする高木さんが好きです。
主人公とも気安かったし、カプ厨の私としてはこちらもこちらで捨てがたい。
まぁ、絶対的ヒロインとして剣崎がいるからどうしようもないけど。
総括
設定の奇抜さ、本格ミステリの面白さ、グイグイ読んでいける文章の巧妙さ。
何よりも一瞬でも目を話したくない、ジェットコースターのような息継ぐ暇無き急展開が楽しい。
エンタメに満ちた奇想天外本格ミステリでした。
何か一言でも口にすると大事なネタバレになってしまうので割愛。
それだけ舞台設定からシナリオからキャラクターまで微に入り細を穿って練り込まれた物語でした。
読み終わった後、「誰かに話したい。でも一言でも話すとネタバレになる」という苦しみを味わうという・・・・(´・ω・`)
そしてヒロインが可愛い。
何度でも言うがヒロインが可愛い。
これ続編書いてほしいんですがどうなんですかね。
館シリーズ、作家アリスシリーズみたいに連作行きましょうよ。
剣崎にもう一度会えることを願いつつ。
今村昌弘 「屍人荘の殺人」 おすすめです。
- 作者: 今村昌弘
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2017/10/12
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (25件) を見る
=>二作目出ました。
www.citrussin.com
P.S.
最後に賞の選評が乗ってたんですが(Bookwalkerで購入)。
さすがは選考委員会メンバー。
選評文がどれも素晴らしく秀逸。
屍人荘はもちろん、他の作品も読んでみたい!と思わせながら、いいところと悪いところを的確に表現した選評でした。
特に
「ハーレム系ライトノベルテンプレを題材にそれを逆手に取ってミステリに仕上げた」という『幽霊は時計仕掛け』
と
優秀作として「語り部が語るありふれた家族物語という前半からの、新聞記者が真実を語る怒涛の後半」という『だから殺せなかった』
は大いに気になった。
一本木透先生の『だから殺せなかった』は東京創元社さんから刊行予定だそうですね。
チェックしておくか・・・・
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