citrussinのチラシの裏

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おすすめミステリ:今邑彩の貴島柊志シリーズ第一作「i(アイ)鏡に消えた殺人者」を読んだので感想。とてもきれいにまとまった良作で、初心者にこそおすすめ。

鏡。
怖い話、奇妙な話。
そういったものによく出てくる題材ですよねー。
自分であって自分でなし。同じように動いているようで違って見えてしまう。

ミステリでいい作品ないかと友達に聞いて上げられた一作「鏡に消えた殺人者」。

i(アイ)?鏡に消えた殺人者? 警視庁捜査一課・貴島柊志 (光文社文庫)

i(アイ)?鏡に消えた殺人者? 警視庁捜査一課・貴島柊志 (光文社文庫)

最近買って読み終えました。
いや、起承転結きれいにまとまっており、ミステリ初心者にこそぴったりな一作だと思いました。
本格推理ものよりは起伏に飛んでいてエンタメしてますし、コナンとか金田一とか好きなら読んで欲しい。




あり得ない殺人現場、アリバイを持たないのが鏡の中の幽霊のみ、動機不在とことごとく交錯するシナリオがある気付きから一点に収束する様はとても楽しめました。
ということで、
今邑彩の貴島柊志シリーズ第一作「i(アイ)鏡に消えた殺人者」感想

あらすじ

自宅で刺殺された作家・砂村悦子。彼女が死の直前に書いた小説は、かつて彼女に殺された従妹のアイが鏡に宿り悦子を殺すという内容だった。
そして刺殺現場に残された犯人の足跡は、部屋の隅にある鏡の前で忽然と途絶えていた。
なぜ犯人は彼女の小説を模したのか。鏡の中復讐者は本当に存在したのか。
目撃者もなく、すべての証拠が「犯人は鏡の中に消えた」と語る殺人はいかなる結末をたどるのか。
やがて明らかになる真相と最後に秘められた衝撃の事実をあなたは見抜けるか!!

てきなストーリー。
フーダニット(誰が殺したか)とハウダニット(どうやって殺したか)を突きとめる本題と、最後に明かされる作品全体を包む真相にゾクゾクします。
トリックは非常に簡単なんですが、それをうまく「鏡に消えた殺人者」という題材で覆い隠しているのが素晴らしいです。
話を追うごとにヒントが散りばめられ、主人公「貴島柊志」がちゃんと番号振りで整理してくれるところも読みやすい。
起伏のある展開と、飽きさせない作りを考えても初心者向き。
一番最初の伏線を細かく見聞せずに、見破れないまま読み進めたほうが面白いです。
真犯人がわかった段階でね、読み返して「ああなるほど」と思うのが醍醐味かと思います。



さらに最後に嬉しいどんでん返しも用意され、解決編の後に

不可解な謎はすべて解明され、事件は一件落着した。
いや、一件落着したかのように見えた

って文章が続くんですよ。
そこからの全容の回答、つまりどんでん返しも楽しめました。
二段ヒックリ返しになっていて、 一回目のヒックリ返しで致命的な矛盾が発生するようになってます。
そこからのプロローグにつながっているエピローグですよ。
非常にきれいな締めでした。


きれいに貼られた伏線とまとめられた推理劇

すべての現場証拠がプロローグで意味深に語られる「鏡の中幽霊」が犯人だと語っている。
でも、推理モノとしても作中の刑事御一行としてもそんな推理は認められないわけで。
さて読者が気づくのが早いか編集者が気付くのが早いか、それとも貴島が気づくまで待つか。
この単純なトリックを見事なサスペンス・ミステリーに仕上げているところが作家の力量を表しているなと思います。
読み返して見ると所々に貼られた絶妙な伏線にびっくりします。
ネタバレ見るの厳禁。


話の筋としては、一応主人公となる貴島柊志がちゃんと現状確認や謎を列挙してくれるのが初心者にもありがたい作りかと思います。
ともすれば複雑になりすぎて「どこが不思議なの?」となってしまいがちな推理モノをエンタテイメントにしています。
メインの謎が「いるはずのない鏡の中幽霊」ってところなので、これを追っていくというストーリーが推理劇としても分かりやすく、楽しめる。
逆に最後の締め方は本格派の人の中では不評になるかもしれないなーと。
エンタテイメントとして読むのが吉。

情景描写が細かい

逐一情景描写に気を配っているなと思いました。
伏線の付け方も、ちょっとしたことから重大な事実に気づくところも、その持っていきかたが美しい。
こんなに不自然なテーマを扱っているのに無理やりな印象を受けない。
こういうのって所謂「推理モノのテンプレ」ってのに甘えて疎かにする人もいるのだけど、とても重要だと思います。
雰囲気作りとか、細部まで目を届かせる伏線とか。
ふとしたことも「実は」につながっているというのが心地よかったです。



総括

エンタメと初心者への気配りに満ちた良作。
わかりやすいトリックを文章力で覆い隠し、初心者でも見事に「そうだったのか!」を楽しませてくれる一作でした。
貪るように最後まで読むべし。
疑問に思ったところや不審なところが最後に暴かれるのは快感ですよ。


i(アイ)?鏡に消えた殺人者? 警視庁捜査一課・貴島柊志 (光文社文庫)

i(アイ)?鏡に消えた殺人者? 警視庁捜査一課・貴島柊志 (光文社文庫)




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