citrussinのチラシの裏

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”競技ダンス”という異色の高校部活物。横田卓馬「背すじをピン!と」。その肩に触れた手の意味を描く極上のボーイ・ミーツ・ガール。

漫画家横田卓馬を知ったのは、「戦闘破壊学園ダンゲロス」を読んだときでした。
あの作品は、原作ありとはいえ、すごい作品でした。
もう、「すごい作品」としか言いようがないからねダンゲロスは。
ええ。読んだ人間にだけわかればいい。
あれはすごかった・・・・・・・・
とりあえず、読み終わったら「チンパイ!」って叫びましょう。

戦闘破壊学園ダンゲロス(1) (ヤングマガジンコミックス)

戦闘破壊学園ダンゲロス(1) (ヤングマガジンコミックス)


んで、その横田卓馬先生がですね、ジャンプで執筆された異色の高校部活物。
「背すじをピン!と」

背すじをピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~ 1 (ジャンプコミックス)

背すじをピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~ 1 (ジャンプコミックス)

積んでたのを崩しました。
異色&驚愕の満漢全席たるダンゲロスと違って、王道なボーイ・ミーツ・ガールものでした。
そしてさすがは横田先生。もう、勢いがすごい。
アツい、疾い、かわいい、かっこいい。
一気読みさせられました。
引力がやばい。

ということで、とりとめなく感想。


注:この記事は「背すじをピン!と 」の軽いネタバレを含みます



あらすじ

この春、鹿鳴館高校に入学した土屋雅春は、ごく普通の、そして「自分に自信がもてない」高校生だった。
だが、彼は入学式のその日、トイレで出会った先輩の一言から運命に出会う。
「さっさと席戻れよ。おもしれーもん見逃すぞ」
その入学式の舞台上で行われたのは、見たこともない「競技ダンス部」のパフォーマンスであった。
圧倒的で、きらびやかで、ワクワクして、ドキドキして。
そのトキメキと、「美人の先輩の体に触れ放題」という下心を持って、彼は「競技ダンス部」の門をたたく。
だがそこに待ち受けていたのは、強烈な個性を持った三年生の、熱烈な歓迎・・・・・
一緒に来た友人は逃げ出して、結局入部したのは逃げ遅れた雅春と、亘理英里という名の女の子の二人だけ。
雅春と英里はなし崩しにダンスパートナーとなる。

知らない部活、知らない世界、知らない同士のカップル。
全てが未知の世界へ踏み出した二人に待っていたのは、思いもしなかった青春であった。


一気に読んでいただきたい。
一気に読みました。
最初の立ち上がりから、1,2,3,4と巻を経るごとに面白さが加速していきます。
主人公カップルがはじめての試合に出たときなんか、もう、完全にのめり込んで一生懸命応援する自分がいました。
がんばれ。まけんな。
お前らのこと見てるから。
お前らがすごいってこと、知ってるから。

競技ダンス漫画って面白いのそれ?

面白いです。
全く身近ではない、想像もできないようなある種別世界の部活物。
でも面白いです。
競技の面白さも、テクニックの細かさも、見どころも全くわからないジャンルですが、でも引き込まれます。

これにはいろんな理由がありますが、最も取り上げたいのが画面映えの良さ・・・・でしょう。
最初の新入生勧誘部活紹介でのダンスシーンから一気に引き込まれました。
男の子も女の子も。
みんながみんな、きらびやかなドレスやタキシードを纏い踊る姿は本当に魅力的。
それが画面いっぱいに活き活きと描かれています。

競技ダンスという慣れないものに対して読者が思う「取っつきづらさ」。
その重要度を理解しているのでしょう。
まず見た目のインパクトを重視し、コマ割りや目を引く構図でもって、「一種のわかりにくさ」を「未知への興味」に引きずり込んでいます。
本当に見事と言わざるを得ない。

最高にエモいボーイミーツガール

なんだろう。
ボーイ・ミーツ・ガールの傑作です。
未知なる未来に希望があふれる、思春期の男女の関係性が非常にエモいです。
そしてそこにあるのは「信頼」です。
お互いに対する様々な「信頼のカタチ」
高校生という思春期を迎えた男女。その二人の間の絆の有様。
これが最高に萌える。

なんて言えばいいのかなぁ。
読んだ人間にしか伝わらないことが確実にあるんですが。
社交ダンスは男性が女性を「リード」するが、それができるのは女性がそれを「許している」からなのよ。
手を引く男の子と、それを受け入れてあげる女の子。
その二人の触れ合った一点に、様々な形が、思いがある。
ダンスを始める際に、男性が上げた腕を女性が肩に導く。
その意味が、カップルごとに違う意味を持っている。
もうそれが、本当に最高。

まだあどけない、高校生、思春期の中で。
先に落ち着いた大人になり始めている女の子が、背伸びをしながらカッコつけたがる男の子を、しょうがないなぁと思いながら受け入れる姿が。

こいつにだけは負けたくないと。
お互いの力を認め合いながら、お互いに意地を貼り続けて、真正面からぶつかり合う男女の姿が。

お互いを疑わぬ、どこか安定しきった信頼感の中で停滞していた二人が。
そのお互いの大切さを再認識したときに生まれる、互いの関係性を変えた新しい姿が。
とても素晴らしい。心が揺さぶられました。


特にリードのカタチとしては、決勝の三年生カップルとラテン部門二年生カップルのシーンが象徴的ですよね。
「お前のパートナーは俺なんだ」と。
「だから俺についてきてくれ」と。
男が勇気を振り絞って請い求める。
意地を張り、胸を張り、相手を見据え。
だが・・、社交ダンスでは男から手を引いてはいけないんです。
女の子が、そのリードを許可してあげないといけない。
受け入れてあげないといけない。


競技ダンスに出場するカップルたちは、みんながみんな違った「信頼のカタチ」を持っていて。
そのカタチ、その結末。
その種々多様な姿こそが、きっとこの作品をボーイ・ミーツ・ガールの傑作たらしめているのだと思います。

勢いよく進む、アツい青春群像劇

特に決勝戦。
ダダ泣きしました。

あの全てを受け継いだ「ブースト」が、未来へ送る先輩から後輩へのエールが。
全てが一本につながり、絶対的な覇者を驚かせたあの瞬間。
ああ、そうか。これは部活物だったよなと思いました。
先輩として意地を見せなきゃいけないよな!と。

そしてそれに答えるライバルたち。
立ちふさがる絶対の象徴。
自らに課した優勝の意地。
ぶつかり合い。パートナーとの絆。
大切にするものと、大切な思い。
これは王道の部活物だわぁ(*´∀`*)


社交ダンスという異色のテーマを舞台にしているけれども、中身は王道の高校生部活物。
先輩から後輩へ最後に贈る、最高のとっておき。
長年のライバルに見せつける、最高の意地っ張り。

わけのわからないものが胸にこみ上げてきて、泣くしかありませんでした。
一人が望み、二人で立ち上げ、みんなで作った鹿高競技ダンス部だったからこそ。
繋いできた手が、その先を勝ち取った。

”競技ダンス”という異色でありながら、ストーリーラインは熱い王道部活物でした。


総括

物語は爽快感と疾走感を持って進み手早くたたまれます。
正直な話、多分「もう書きたいものを書ききったらおしまい」というスタンスで進んでいたんだと思われ。
まぁ、あれ以上先を書いても蛇足になるかもしれない。
そもそも「競技ダンスの深さ」よりも「競技ダンスの面白さ」を優先した作品ですし、あれはあれでよかったと思う。
隔週の雑誌で読むよりも、単行本で一気読みしたほうが絶対にいい。
様々な点が先に繋がり、みんながみんな成長し、一つのクライマックスに向けて突っ走っていく熱さが最高でした。



ボーイ・ミーツ・ガールとして、アツすぎる青春マンガとして。
横田卓馬「背すじをピン!と」。

背すじをピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~ 1 (ジャンプコミックス)

背すじをピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~ 1 (ジャンプコミックス)

面白かったです。
10巻完結でまとまってるので、ぜひぜひ手にとって見てください。

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