森橋ビンゴ先生といえば、
PSPの良作DRPGセブンスドラゴンのシナリオや、
- 出版社/メーカー: セガ
- 発売日: 2011/11/23
- メディア: Video Game
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思春期文系高校生カップルの切ない恋愛ストーリーを描ききったラノベ「東雲侑子シリーズ」
(巻数表記はないですが短編小説=>恋愛小説=>すべての小説の順番で読みましょう)
- 作者: 森橋ビンゴ,Nardack
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2011/09/30
- メディア: 文庫
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で有名なシリアスや恋愛の複雑で切ない関係を彩るのが上手なライターさんです。
特に東雲侑子シリーズは、3冊でキレイに思春期の恋愛を描ききった傑作で、ぜひぜひおすすめしたい一作。
そんな森橋さんが、東雲侑子シリーズの続き、かつGIDものとして書かれたラブストーリー「この恋と、その未来。」がこの度6冊で完結を迎えましたので、読み切り感想書きたいと思います。
注意はしてますが、若干のネタバレが入ります。
- 作者: 森橋ビンゴ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / エンターブレイン
- 発売日: 2014/07/30
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- 作者: 森橋ビンゴ
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GIDものとしては、森橋さん原作で誰にも言えない恋心と、性別という壁を描くコミック「この恋に未来はない」が現在連載されており、
「この恋と、その未来。」が気に入ったらこちらも試してみることをおすすめします。
(とはいえ単行本出てないけど)
GIDってなんじゃ?
性同一性障害(Gender Identity Disorder)を略してGIDです。
以前このブログでTSF(トランスセクシャルファンタジー)ものを紹介しました。
www.citrussin.com
とはいえ、F(ファンタジー)がついているように、こういったTSコメディ(性転換コメディ)は、明るく楽しくするために多分にファンタジー(幻想)が入っています。
ですが、現実にFTM、MTF(女性から男性へ、男性から女性へ)を望む「心とカラダの性別が一致していない人」は少なからずいます。
そういった方々は多くの悩みや現状への不満を抱えており、GIDを絡む恋愛事情はファンタジーのように、明るいものとは限りません。
例えばGIDもので有名な作品としては3年B組金八先生(第6シリーズ)が上げれるかと思います。
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2011/03/25
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そのギャップや周りの反応に、思春期の揺れやすい心が衝突し、様々な問題が提起された一作です。
思えば、上戸彩さんはこの作品からブレイクしましたねー。月日が立つのは早いものです。
GIDでファンタジー込みのコミックとかだと、「ボーダー」とか有名ですね。
- 作者: 渡辺ペコ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/04/18
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「この恋と、その未来。」は性同一性障害で、体は女の子ですが、心は男の子な未来くんと親友になり、心を惹かれてしまった少年「松永四郎」が、高校生活の中で様々な経験を重ね、やがて大人になるまでの物語です。
あらすじ
ーーー恋は、心でするのだろうか?
それとも、体でするのだろうか
全く家に帰ってこない破天荒な父親のせいで、自分以外全て女性の家庭で育った少年「松永四郎」。
家でのヒエラルキーは低く、強気の女性が苦手になり、超理不尽な三人の姉たちに奴隷のようにこき使われる日々。
そんな中、広島の全寮制高校になんとか進学を決め、東京の家から脱出に成功する。
知らない土地、耳慣れない言葉、そして何よりもあの姉達との不条理な日々から離れた高揚感に浸る四郎だったが、ルームメイトとなった織田未来は男の心を持った女性だった。
四郎は、教師からも、未来本人からも「秘密を守るために協力してくれ」と頼まれ、渋々引き受ける
未来との生活は楽しく、二人は親友同士になっていくが、次第に四郎は「女の未来への情愛と男の未来への親愛」に区別がつかなくなっていく。
親友に懸想していることがしれたら、未来との仲も壊れてしまう。
歪な親友関係のまま、四郎にも未来にも彼女ができるようになり。。。。
GIDに生まれた苦しみ。好きな女の子に受け入れてもらえるか分からない苦悩。
親友に恋した苦しみ。どうやっても彼(彼女)の恋愛対象になれない苦悩。
彼らの三年間の行方はどうなるのだろう。
はい。
ということで、コメディちっくなものが多いTSFものよりも結構シリアス、かつ切ないストーリーとなっています。
性別と恋愛の不一致に悩みながらも、高校という二度と無い時間を共に過ごしていく、そのかけがえない煌めきとどうにもならない不安感が狂おしく美しい一作です。
そして、この作品では途中から東雲侑子シリーズの二人が登場し、主人公とも深く関わっていくことになります。
ぜひぜひ、東雲侑子シリーズを先に読んで更に楽しんでいただきたいところ。
(まぁ、別に読んでなくても本筋には影響しませんが)
- 作者: 森橋ビンゴ,Nardack
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- 発売日: 2011/09/30
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森橋ビンゴ先生はこの作品の完結を持ってラノベから撤退。今後は漫画原作とゲームシナリオに注力するそうです。
残念でならない。この人の読みやすい文体と、狂おしい恋愛関係はとても大好きでした。
GIDを正面から描きながらも、ライトノベルとしての読みやすさを忘れない良作
性同一性障害である未来は、心は男であり、女性が好きです。
そこに一切のブレはなく、最初から四郎の恋に勝ち目は一切ありません。
所謂ファンタジー要素もほとんどなく、どうしようもない現実やどうしようもない事実に四郎や未来は徹底的に打ちのめされていきます。
両親の不理解、友達への嘘、性別が異なるゆえの不自由さ、恋愛への臆病とあこがれ、男性同士の友人づきあいの尊さ。
未来の現実はとてつもない大きな壁が立ちはだかっています。
さらに四郎にも大きな壁があります。
未来ははじめて出来た男の親友がとても大事なものになりました。
いつもいつも自分が女だと知ったら態度を変える友達たちに疲れていたこともあります。
しかし四郎は、自分を男の友人として扱うからです。
でも、四郎自身はどんどん未来に惹かれていっている自分を自覚してしまうわけです。
恋は体でするのか、心でするのか。
高校生に突きつけるにはなかなか重い議題。
広島での3年間は、女性に弱く、自分に自身がなかった四郎を大人に変えていきます。
成長物語として、6巻を読み終えた時、「四郎くん、、おとなになったなー」と感じてしまうこと間違い無し。
破天荒な父親
四郎の父親がね、悪くて頼りになる男なんですよ。
ずっとクズだと思っていた。というか実際屑な父親が、このどうしようもない事態の唯一の理解者になってくれる。
最初は四郎を子供扱いしていた父親も、どんどん大人になる四郎に気付いてしっかり支えていくんですよ。
今まで誘わなかった、大人の付き合いに四郎を誘うようになったりして。
あと驚愕の事実が大量に出てきたりもして。
この二人の奇妙な関係が、すごく良かったです。
本当に屑なんだけど、意外と頼りになってしまう父親に反発しながらも認めあっていく男の関係。
やっぱ、森橋さんの人間関係描写はピカイチだと思います。
魅力的なキャラクターによって彩られる3年間の物語。
この作品は6冊で高校三年間を描き切ります。
そんな中で、四郎と未来の周りに様々なヒロインと、友人たちが現れます。
男として振る舞う未来を好きになってしまう同級生の和田香織。
未来に惹かれる四郎を好きになってしまう同級生、本作の良心三好沙耶。
四郎の姉の友達で広島でのバイト先の美人店長にして、重いストーリーの清涼剤楠広美。
未来が惚れる別高校の美少女、山城要
など。
初っ端から、魅力的なキャラクターが登場し話に華を添えてくれます。
特に広美さんと、後半から出てくる後輩の梵ちゃんが個人的にとても好きでした。
未来の和田さんや山城さんに惹かれながらも、体を女だと言えない苦悩や、未来が好きなままの四郎へ恋い焦がれる三好さんとの関係など。
人間関係が複雑話がとても重い中で、清涼剤でした。。。。
でした。。。。
うん。
男衆も重くなりがちなストーリーに笑いを提供してくれます。
バカなやり取りは、それだけで未来のあこがれでもありました。
風呂のぞき、女装喫茶、合コン、マゾッホ。
友達というのは、何もなくとも心の支えになってくれるのだなと。
その存在自体に救われるのだと。
ずるい女性たちの駆け引きと四郎と未来の行方。
ずっと女性は怖いと思っていた。
でも違う。女の子って強くて、”ずるい”
ずるいんですよ。
すっごく。
未来を忘れられない四郎くんへのアプローチを含めて、沙耶さんも広美さんも強くてずるい。
それがすごくいいんです。
駆け引きが四郎を振り回し、でも未来のその親友としての関係がいつまで立っても彼の心に楔を打ち続けるんです。
「好きな男の子をどうにかしたいと思ったら使えるものはなんでも使うよ」とは作中のとある女性の言ですが、そのずるさが可愛さにつながっている。
全力で焦がれる男女の恋愛ものは、複雑に絡み合いつつも物語を面白くしています。
広島弁のヒロインが可愛い。
広島弁可愛くね?
超かわいいんですけど?
ぶちかわいい。
特におとなしく控えめでありつつも芯の強さを見せる沙耶さんと、あっけらかんとしながらもときに年上の女性の魅力をちらっと見せる広美さん
”ん”が”ン”になっているところもポイント。
なんか、特有のイントネーションを感じて好きです。
二転三転する恋愛関係。
誰が優勢になるかわからない。
でも、少なくともGIDである未来と四郎の間に恋愛関係は生じない。
けれども、四郎はどうやったって未来を忘れられない。
その絶妙なバランスと、青臭くも煌めいている青春なやり取りがこの作品の真骨頂だと思います。
え、このキャラにこんな魅力が合ったのか!!
と何度も思わされました。
お仕着せの萌属性に流されない、移りゆく人間の魅力が存分に引き出されていて、清濁合わせ飲みながらずるくて、でも愛おしい恋愛模様が繰り広げられました。
総括
巧みな人間関係描写で織りなす、ちょっと違ったラブストーリー。
二人の友情の行方は。
そして四郎の答えは。
人生とは○か☓かではないのだと。
二択しか無いわけではなく、また逃げることも避けることも見ないことも恥じることはないのだと。
当たり前の「人生とは様々である」ということを再認識させてくれる良作でした。
もし気になったらお手にとって見てください。
東雲侑子と三並英太のその後も読めますので、東雲侑子シリーズを読んだ人は特におすすめ。
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