「米澤穂信と古典部」と、その中の描き下ろし短編『虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人』読みました。
えがった(・∀・)
やっぱ米澤さんの作品大好き。
ということで感想雑記。
小説部分はわずか50ページの短編で単独感想記事にするにはアレだったので、感想雑記のグループに入れました。
注:この記事は各作品のネタバレを含みます
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2017/10/13
- メディア: Kindle版
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米澤穂信と古典部
「米澤穂信と古典部」事態は解説&インタビュー本で、名の通り米澤ファンと古典部ファンのための ムック本となってます。
各キャラの解説や作品の解説。
中盤後ろあたりには古典部メンバーの書棚になんの本が入っているかを特集した「XXの書棚」など読み応えのある解説になってます。
前半部のインタビューでは
古典部はミステリ世界にはあまり身をおいていないけど、
小市民の二人はまさしく「出かけ先で必ず事件に遭遇する」ミステリ世界の人物
とか
福部里志も「浅く広く」なままではいられない
とか。
いろんな心情やこぼれ話がとても楽しかった。
短編集「いまさら翼といわれても」で、伊原摩耶花視点が2つはいってたのは、私達の伝説の一冊は絶対摩耶花視点であるべきだから
とかの裏事情も色々と抱えれてました。こう言うの好きな人は好きだろう。
=>いまさら翼といわれても感想
古典部&氷菓ファンは絶対読むべき結末がここに。米澤穂信古典部シリーズ最新作短編集「今更翼といわれても」読書感想。 - citrussinのチラシの裏
ところで、伊原摩耶花の書棚に「地球へ…」や「11人いる」などの名作マンガと並んで『動物のお医者さん』と『パトレイバー』なんかもありましたね。
=>「いまさら翼といわれても」を読んだら後、叔母の影響だとわかった。
いい趣味してますねー。
動物のお医者さんはレーベルこそ花とゆめコミックですが、超名作コメディですので男性の人も読んでほしい。
- 作者: 佐々木倫子
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虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人
50ページほどの短編が載ってます。
題名はすなわち「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」
=>後日積んでいた「いまさら翼といわれても」内の短編の後日談だとわかる。順序逆に読んじゃった。(´・ω・`)
=>こっちが先でしたね
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ストーリーとしては、大日向友子(ふたりの距離の概算にて入部した新入生)が持ってきた「鏑矢中学校の読書感想文例集」にまつわる話。
これまでの卒業生が書いた中で「良い感想文」だったものを国語の先生が纏めたもので、中にH.Oなる人物がいたのです。
大日向友子「私このH.Oさんの作品スキなんですよ!」
福部里志「へー。。。。見るからに手を抜くことに余年がなく、うがった話の見方をしていて。。。鏑矢中学校出身のH.Oねー。。。。誰だと思う?。H・・じゃなくて、ほーたろー?」
折木奉太郎「だれか・・・誰か俺を殺してくれ・・・・」
ということで、H.Oこと折木奉太郎の3年間3作品を見ることに。
中学生時代にうっきうきで書いた感想文を高校になって友人たちに読まれるとか。。。
恥ずか死ねますね。
まさに折木奉太郎の殺人
題名通り二年目(山月記)と三年目(芥川龍之介版さるかに合戦)の感想文が主題で、一年生時のメロス感想が入ってなかったのが残念。
=>積んでた新作(いまさら翼といわれても)読んでたら、走れメロスのエピソードが合ったわ。なるほど、ここに掛ってくるのね。
山月記は奉太郎節、古典部節炸裂の感想文ですね。
まともに読むと普通の作品なのに、ある一点の瑕疵からまるで違った世界を見せる。
これこそ奉太郎マジック
まず最初に思うのは、感想文の書き方が素晴らしい
これぞ感想文。さすがの米澤さん。書くべきことを原稿用紙5枚に収めてますね。
拙作の「読書感想文の書き方記事」にもこの方法乗っけようかな。
=>適当にのっけた。いやさ、米澤さんに比べると拙い拙い書き方だけど。
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で、次に思うのが「これぞ奉太郎節!!」的な。
見事な解釈だね。
「わざと表面情報だけみて考えられる別の真実の発見」
いやぁ、美しい。確かに無駄もなければ矛盾もない。
自分としては考えたこともなかったっすね。確かに李徴の姿見てないね。
最後の締め方もよかった。
2択の可能性を出して、周辺情報(家族の心配を最後にしたことを恥じた)からズバッと一つの可能性に収束させる。
見事な推理物語。拍手喝采満員御礼。
コレが原稿用紙5枚ってんだから凄まじい。
そして、やっぱりこの千反田えるの反応な。
可愛すぎかよ
びっくりして一回止めていることが大好き。
米澤さんのキャラ描写やっぱ上手いわ。一回ラブコメラノベ出してみない?
恋するメトロームみたいなの書いてほしい。
千反田さんの細かな表情や動きが伝わってきてホント好き。
ちなみに個人的なNo1千反田えるは、「連峰は晴れているか」の『それってなんだかうまく伝えられないけど』千反田さんです。
次にさるかに合戦。
一見今まで通りのうがった読み方をした感想文ですが、実は奉太郎が仕掛けたギミックがあります。
他(山月記、メロス)と違って、揚げ足取りみたいな内容に違和感を感じる他メンバー。
「たのむ。さるかに合戦の裏だけには気付くな。頼むから!!」
と、心のなかで祈り続けるほーたろーがとても可愛いです。
それにしても、やっぱり千反田えるはいいなぁ。
キャラが立ってる。
頭が良くて、でも少し抜けてて、圧倒的なまでに”他とは違う種類の”謎解きが映える。
「私みなさんとは違って、融通がきかないみたいで」とは本人談。でも、融通がきかないというよりも視点が違うと言ったほうがいい。
いつもは奉太郎に頼るけど、全員が解けなかった謎を意図せずすらっと解いてしまうのが、えるらしいなぁ。
しかも解法が素晴らしく突飛。
いや、私達読者からしてみるとそんなに違和感ある解き方じゃないんですが、今回は「古典部メンバーは裏があると知らない」という前提があります。
なので、里志や摩耶花はロジック的に「なぜこの感想文が良くないのか」とか「揚げ足と感じる理由」みたいなのを整理付けて話していて、真実にたどり着くことはありませんでした。
H.Oのファンである友子は、そもそもから「この作品も大すき!」となっていて疑うことすらしないし。
そんな中で、「なんで一人称があるんだろう?」とか「漢字とカナの取扱」とか。
前々から思ってたけど、やっぱりえるってラテラルシンキングだよね。全体的に水平思考。
(逆にメチャクチャ頭はいいけど、ロジカルシンキング的な積み上げ式論理は苦手っぽい?第一巻氷菓で閉じ込められた経緯や、チョコレート事件などでも奉太郎に任せっきりだったしね。)
例えば愚者のエンドロールでもそうだった。
里志や摩耶花が残された証拠から『万人の死角』の結末のありえなさを訴えたのに対して、彼女だけは”本郷真由はそんなことをしない”という切り口でした。
結果的に他二人よりも真相に近づける言葉を奉太郎に与えることになりましたね。
まさしく、副題Why did't she ask EBA?を言い当てた瞬間とも言える(流石に言いすぎか)
それにしても、さるかにの結末含めて中学生時代の奉太郎が垣間見えてすごくよかった。
奉太郎が可愛すぎてならない。
わかるわー。
変わり者で頭のいい奉太郎にとって、この先生はとてもいい先生だったんだろうな。
山月記の返しに
おもしろいけど、おもしろすぎた
って批評をしているところから考えても、とても頭の回転が速い。
子どもたちの発想は自由であるべき。
読書感想文とは筆者の気持ちを読むのではなく、そこに書かれた文章を味わうこと。
素晴らしい教育概念だと思います。
てな感じのムック本内古典部シリーズ最新短編でした。
個人的には満足
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それにしても、新作は50ページだったんだよねー。
コレだけのために買えというのはちょっと厳しいかね、ファン以外には。
人によっては短編集待ちしそう。。。
インタビュー記事とか書棚特集はさらっと立ち読みできちゃうしね。。。
まぁ、そういうのもあって。
古典部シリーズ新作短編集の「いまさら翼といわれても」も、布教のために感想記事書こうかなー。
=>現行の古典部シリーズ最新作はこっち
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=>古典部シリーズおすすめ!
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