ツイッターで投稿されている『オタたちの祭りが織りなすギャグコメディ童話』
一度見たら忘れられないあの濃い濃いキャラたちが、単行本になりました。
おのでらさん「コミケ童話」
- 作者: おのでらさん
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/11/24
- メディア: 単行本
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前回紹介したヒストリエと一緒に買ってました。
=>前回
説得力あふれる狂った歴史観と名言だらけの歴史ギャグコミック。火鳥「快楽ヒストリエ」が面白い。 - citrussinのチラシの裏
ツイッターでほとんど読んでるしなぁって思ってたけど、追記や描き下ろしも多くて、やっぱ買ってよかったです。
単行本でてからちょい立ってるけど、11月に二巻が出るそうなので。
さらなる布教のために感想雑記。
ところで、いつもなら「おのでらさん先生」と書くところなんでしょうけど、おね兄様どころじゃない違和感があるので敬称は略します。
MAZEは名作。
あらすじ
1975年12月
その日、東京のある会議室で小さな催しが開かれていた。
参加したサークルは、わずかに30余り。
動員人数約800。
ファンによる集会に過ぎなかったイベントは、回を重ねるごとに規模を増し
いつしか、世界でも稀に見る「ヲタク最大の祭典」へと成長する。
一種異様な有象無象たちが一堂に会す。
人はそれを、「コミックマーケット」、略してコミケと呼んだ。
お盆に先祖ではなく同人誌をお迎えに行き、クリスマスにサンタではなく売り子から
夢と希望といろんなものをパンパンに詰めて帰路につく。
そして、その一冊一冊には、参加者たちの多くの苦悩と歓喜のドラマが詰まっていた。
「鶴の恩返し」「三匹の子豚」「金の斧銀の斧」・・・・
これは、オタクのリアルな生態を童話になぞらえて紐解く、笑いと涙に包まれた「コミケ秘話」。
はい。
あらすじ最初の文は名作ADV「らくえん」のアレから引用しました。
2006年初夏『月面基地前PREMIUMBOX2』発売いつまでも待ってます(´;ω;`)
コミケという「誰でも誰かの当事者になれる」という日本最大級のヲタの祭典。
その参加者たちが、コミケという祭りに向けて出会う悲喜交交な物語。
誰もが知ってるあの童話この昔話が、見事に”コミケナイズ”されていて。
一般人が見たらたぶん首を傾げるんだろうなぁ、っていう「情熱」と「情念」が渦巻きまくっていて。
その熱量と濃すぎるキャラたちの悪戦苦闘がツボに入ります。
ツイッターで殆ど読んでいたんですが、まとまった「単行本」として出てくれたことが嬉しい。
最後の書き下ろしで全員がつながった時は、なんか謎の感動がありました。
おのでらさんの描く作品には、「コミケという場」への確かな愛があって、そういうのがすごく良いんですよ。
「コミケ行ってみたいなぁ」って思わせてくれる。
そういう良さがある。
声にならない表情がとても素晴らしい
おのでらさんの作品との出会いは、石油王「ドチャクソ・アブラデル」が最初でした。
あのページを最初に見たときの衝撃は忘れられない。
ずっと頭の片隅に、あの顔が残り続けた。
表情がね、すっごくいい。
コメディで、ユーモアがあって、真剣さが伝わってきて、伝えられない不自由さへの苦悩と圧倒的な喜びを切に切に訴えかけてきて。
一番最初に拝見したコミケ童話は、「シンデレラ」でして。
ドチャクソ・アブラデル氏の、その居ても立ってもいられない衝動を描いた三コマがね。
めっちゃ記憶に残りました。一発でファンになった。
- 作者様がツイッターで公開しているコミケ童話「シンデレラ」
石油王の漫画を描きました(4ページ) #コミケ童話 pic.twitter.com/O61TNGBEk1
— おのでらさん@コミケ童話2巻出ます (@onoderasan001) 2016年12月30日
萌ってね、「胸を突き上げる、言葉にならないある種の衝動」だと思うんです。
言葉にならない、狂おしいまでの衝動。
ていうか、おおよそこの手の感情を言葉にすると、大いに嘘くさくなるし。
心動かすものに出会った時に興る感情って、その思いを表現する言語は存在しないと思うのよ。
頑張って伝えたい素晴らしいナニカがあって、でも言葉にした瞬間にそれは意味のないものになってしまいそうで。
そんな大切な一作に出会えたある種の尊さを、それでも伝えようとした時。
このコミケ童話のように「あらゆる感情が伝わってくるような、それでいて圧し殺しているような」表情が、1つの解なのかもしれない。
もちろん「コメディの表現」でもあって笑えるんだけど、それだけでなくて。
その表情一つ一つから、狂おしいまでのナニカが伝わってきそうで。
そこにはある種の神に捧げる敬虔な想いとその神秘に対する真摯さがあって。
だからこそ、キャラたちが活き活きと魅力的に映るし、彼らのその苦悩に共感とカタルシスを感じる。
「声にならない表情」が、どんな言葉よりも雄弁に気持ちを語っていて。
端的に言って
そこに、圧倒されるような「愛」を感じられる。
萌が、愛おしさが、言葉にならない想いをそれでも感謝を伝えようとあがく渇きが伝わってくる。
その熱量とリスペクト精神がコミケ童話のすごいところだと思います。
総括
おのでらさんの「コミケ童話」はツイッターで全部拝見させてもらっていましたが、新規描き下ろしも多くて新鮮に楽しめました。
それにしても、この人の書くキャラは魅力的。
とくに「おっさん」や「爺さん婆さん」がいい味出してる。
一番好きなキャラは、やっぱドチャクソアブラデル氏ですかね。
ラブコメヤクザと神おっさんも大好きですが。
ストーリー部分としては、落とし込みもそうですが最後のオチが本当に秀逸。
本当に上手い具合に童話をパロってる。
童話のモチーフがヲタ活と見事に融合していて、各話読み終わってからタイトルを見返すと「ああ!そうやね!」ってなったりして。
一発ネタや細かいモチーフ作りやら名言やら、よくもこんなにネタを思いつけるものだなと。
童話モチーフな良質なヲタコメディ。
「こんなことがあったらいいな」というちょっと不思議なヲタク奇譚
おのでらさん「コミケ童話」
- 作者: おのでらさん
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/11/24
- メディア: 単行本
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良ければ手にとって見てください。
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