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citrussinのチラシの裏

ゲームや読書感想、日々のことを適当につづる日記。TwitterID @sinensis197

ファンタジー×魔法×ミステリー? 魔法のある推理小説!米澤穂信「折れた竜骨」がおすすめ

米澤穂信といえば日常の謎やホラーミステリをつづる推理小説家である。
有名な作品といえば『氷菓』の名でアニメ化した古典部シリーズであろう。
古典部シリーズとてもおすすめ。青春ジュブナイル×日常の謎の傑作だと思います。
特に短編「心当たりのあるものは」は所謂 九マイルは遠すぎるのリスペクトだがとても面白いミステリーだ。
ぜひ一度読んでほしい。本を読みたくない方はアニメ「氷菓」を見てくれ。こちらもよくアニメ化されていておすすめ。

「氷菓」BD-BOX [Blu-ray]

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氷菓<「古典部」シリーズ> (角川文庫)

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その米澤さんが魔法と推理の融合をアマチュア時代に挑戦し、小説として書きまとめたものを、出版用に再度編纂したものが「折れた竜骨」である。
例えばハーレム物の秀作「SHUFFLE!」にて魔界の姫ネリネが「魔界では推理小説は売れません。アリバイやトリックはすべて魔法を使ったで解決するからです。」と言っていた。その通り。嵐の山荘、密室殺人、ダイイング・メッセージ、フーダニット、アリバイ崩し、etc.... さまざまな推理物が成り立つには、現実の常識”奇術にはタネがある”に従うからこそである。
しかし、実は魔法や超能力など、現実には存在しない力を利用するミステリは存在する。
果たして、魔法が堂々とはびこる世界で探偵は探偵たり得るのか!? 出来る。探偵は探偵であることができるのだ!



魔法は存在するが何でもできるわけじゃない

”読者とのあいだに交す約束事さえしっかりしていれば、その約束事がたとえこの世のものでなかったとしても、ミステリは成立する。”
米澤さんはこう記述する。
魔法と言ってもこの小説に出てくる魔法にはすべて約束事がある。
自らを見えなくする魔法はろうそくの火をつけ続けなくてはいなけないし、操りの魔法は操られた本人の主義主張を無視できない。
そこには、特殊ではあるがロジックがあり、事実と論理に基づいた「推理」がある。

特殊な”動機”

卑劣な犯人。こいつを見つけ出すことこそ探偵の本文といってもいい。
この小説で特異なのはまさしくその動機である。
ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。
そこに集められたいずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち
そこで明かされる呪われたデーン人の襲来。
その晩に殺される領主。
ここで、フーダニットなミステリが始まるわけだが、最初から犯人はわかっている。
恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士が、領主を殺したのだ。
しかし、面白いのはその方法である。
暗殺騎士が、操りの魔法を使い、誰かを操って領主を殺したのである。
そして、その”誰か”は自分が殺したことすら知らない
だれもが動機を持たない状況下で、手がかりを探し、暗殺者を暴くのだ。

投げかけられる謎

この小説では非常に多くの謎が問いかけられる。
・自然の要塞であったはずの島で殺された領主
・操られた犯人
・鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年
・呪われたデーン人とソロン諸島の因縁
・暗殺騎士の行方
これらの謎を解き明かしたとき、初めてこの小説に打ち勝つことになる。
とはいえ、私は気楽に読みたかったため、謎が解けないまま回答編を読んだ。


最後の章で次々に解き明かされる謎!息のつく暇もなくひっくり返る世界!
これこそ推理物の醍醐味である。

ぜひぜひ皆様も魔法のある不思議な世界で探偵役ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラと一緒に世界をひっくり返してほしい。
または、私と同じく語り部兼主人公のアミーナとともに謎に翻弄され、最後の大転換に驚きをもって迎えるのもいいだろう。
どちらにせよ折れた竜骨の意味が分かった時、良い読後感に浸れるだろう。
ラノベ読みでも、ミステリ読みでも楽しめる本格ミステリをぜひ楽しんでほしい。

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

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