citrussinのチラシの裏

ゲームや読書感想、日々のことを適当につづる日記。TwitterID @sinensis197

小さな嘘はやがて取り返しのない嘘になっていく。女装主人公もののおすすめコミック nano先生の「狼少年は今日も嘘を重ねる」はキャラ好きもストーリー好きも楽しめる良作ラブコメ

「処女はお姉さまに恋してる/乙女はお姉さまに恋してる」なり、「るいは智を呼ぶ」なり、「月に寄りそう乙女の作法」なり。
双見あやめなり、山田妙子なり、干支名真恵なり。
まぁ、女装主人公物の素晴らしさや面白さ、醍醐味を語りつくすとキリがないわけですが。
今回は、マンガからそんな一作。
嘘が嘘を呼び、罪悪感と使命感の葛藤の中で男性恐怖症の女の子を手助けする女装主人公コメディ。
namo先生の「狼少年は今日も嘘を重ねる」をおすすめしたいと思います。

狼少年は今日も嘘を重ねる(1) (ファミ通クリアコミックス)

狼少年は今日も嘘を重ねる(1) (ファミ通クリアコミックス)

注:ところどころで愛が溢れてしまった箇所は文字小さくしてます。文字小さい文は読まなくても問題なくおすすめできていますので、興味ない方はスルーで。

私に女装主人公ものを語らせたら日が暮れてしまうから大部分を割愛するわけですが、初見にもわかりやすい醍醐味をとりあえず3つほど上げるとすれば

  • 女装主人公自信の可愛さや男らしさのギャップ
  • 隠し通さなければいけないという縛りから来る、ヒロインとの関係性
  • なぜ女装しなければいけないかというストーリー性

といった具合でしょうか。
ストーリーに起伏が付けやすく、どの時点で協力者or敵対者になるかや、隠すことで周りと距離を置かざるをえないジレンマと言った相関図の複雑さが非常に展開を面白いものにします。
例えば協力者という話では「おとぼく」と「おとぼく2」での対比は非常に面白かったし、ストーリーの起伏という点に関してはるいともや釣り乙は半分ミステリに足を突っ込みました。
また、どのキャラクターも男らしさと可愛らしさをギャップ化しやすく、作品の根幹に位置する「主人公」という存在を魅力的に描かせることができます。
ビバ女装主人公物
個人的には釣り乙やねないでのような中性的なタイプよりも、おとぼくやるいともといった男だとしっかりと自覚しているキャラが好きですね。
。。。。。。長くなるのでやめよう。
さて、今作の主人公五木啓太郎も男らしさと可愛らしさが同居した魅力的な主人公に仕上がっています。
中身は男気溢れ、視線だけで不良を怯えさせる、目つきにコンプレックス持ちの主人公が、可愛い女の子に変身するわけです。
いいですよね!(断言)
彼の目的は「惚れたヒロインの男性恐怖症をなおしてあげること」
物語は、こっぴどくヒロインに振られた啓太郎が、目つきの悪さというコンプレックスを解消するために姉に無理やり女装させられ、その姿をヒロインに見られた所から始まります。


あらすじ

そして、あの言葉から
いばら姫をめぐり狼少年の嘘がはじまったのだ

主人公の五木啓太郎はあまりの目つきの悪さにコンプレックスを持っている高校男子。
唯一自分を怖がらなかった図書室の”いばら姫”に惚れ、正面から告白するもみごとに轟沈。
落ち込む彼にそんなあわれな彼に、姉が問う。
「目つきが怖くて怯えられる。。。もし変われるなら、そんな自分から変わりたい?」
急に眠気が襲った彼が、次に目を覚ましたとき。
彼は美少女になっていた。
カリスマメイク師の姉に勧められるがまま街を歩く啓太郎。
子供に微笑まれ、周りからは興味の目を向けられ女装した自分への自信を持ち始めた矢先、不良に絡まれた”いばら姫”と出くわし彼女を助ける。
彼女に名を問われイツキと名乗った啓太郎。
いばら姫は男らしいイツキにある頼みごとを持ちかけた
ーーーー私のはじめての相手になっていただけませんか?


ということで、主人公は啓太郎だけど、女性状態のときはイツキちゃんとしていばら姫を支えていくことになります。
まずはじめに断っておくことですが、みんないい子たちです。
”嘘”という題を扱っているわけですからともすればドロドロになりそうなんですが、みんな気持ちいい人柄なのでコメディとして成立しています。
男性恐怖症なのに非常に見目麗しいヒロイン外鯨葵は、幾多の告白を「気持ち悪い」の一言で切り捨ててきているわけで、ついたあだ名が”いばら姫”。
でも、彼女はとっさに出てしまう”傷つける一言”を非常に悩んでいます。
言いたくない。けど男性に近寄られるだけで恐怖が頂点に達してしまうのです。
なので、どうしてもそれを治したくて悩んでいるわけですね。色んな人を傷つけるこの性分をどうにかしたいわけです。
主人公も男気溢れており、下心ありとは言え、真剣に外鯨さんの悩みに向き合います。
自分がバレてしまう、嫌われてしまうリスクをわかりつつも彼女のために頑張ってしまうわけです。
周りが必要以上にギスギスしすぎない雰囲気というのはコメディには大事ですよね。

主人公が可愛い

イツキちゃん超かわいい。
まぁ、女装主人公ものの鉄板ですよね。主人公が一番魅力的。
このジャンルの利点の一つとして、ハーレムややたら周りに好かれる主人公という男性読者ヘイトが溜まりやすい条件を緩和、あるいは好意に逆転できるという物があります。
例えば女装主人公ものの金字塔であるおとぼくでは、常に人気投票1位が主人公本人だったり。
こう、気遣い屋なんですよ啓太郎くん。
周りに怖がられていた人生のせいで、相手のことをよく見て気遣う癖がついており、さりげない手助けが上手いんです。
なので、ヒロイン勢が啓太郎とイツキ両方に落とされていくというか。
それでいて、ちゃんと男性なので葵をみて照れてしまうとか。イツキの一挙手一投足が恋する乙女の可愛さを具現化しています。
しかしまぁ二重生活なので、醍醐味の一つの”女性として慣れてきた自分を自己嫌悪して落ち込むコメディシーン”てのがまだ少ないです。
どちらかと言うと主人公をいじるのではなく、男前なイツキちゃんと、気遣い上手な啓太郎に萌えつつ、周りを落としていく様子を楽しめます。
そしてこれはこれで大いにあり!!
サッパリとした”男性が憧れる女性の具現化”としてのイツキちゃんがいい味出してます。

さて、二重生活だからこそと言いましたが、女装主人公ものには二重生活と女装した状態のみで暮らす生活とのにパターンが存在していてーーあまりに長くなったため割愛しました。

秘密にしなくてはいけないという魅力

ところで、男の娘というジャンルが発展していますが、女装主人公というジャンルにフォーカスされている作品はあまり多くありません。
しかし個人的には男の娘も好きですが、こういった主人公とヒロインという男女がいてこそのラブコメかとは思っています。
一見して百合!しかし内面では男女。
そういった中でも、恋人同士に発展するまでは男としての自分を隠さねばならないという”嘘”が女装主人公物にはつきものです。
ですが、まぁ、なんだ。ヒロインを男にするというギャップが受けるのか、あんま主人公が女装系って少ないんですよね。
例えば

マンガやラノベの女装主人公といえば「プリティフェイス」や「ハヤテのごとく!」があげられることが多く、他にもアイドルマスターでの「秋月涼」が有名ですが、プリティフェイス以外は”隠す”という最大の魅力にフォーカスしておらず、周りの大半が男だと認知しているものが多いです。アニメ化した「ひめゴト」も主要3人は知っており隠すということについてはあまり注視していません。「深山さんちのベルテイン」などもそうですね。さらにメインキャラクターとして出てくるものを考えるとむしろ主人公に対するヒロインキャラとして扱われることが多く、男の娘というキャラクター性を全面に押し出します。適当に有名なのを上げれば「ストップ!! ひばりくん!」や「まりあ†ほりっく」「プラナス・ガール」。「プリパラ」や「ハイスクールD×D」「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」にも出てきますし、前期アニメで流行った「re:ゼロから始める異世界生活」にもフェリスというキャラが出てきます。男の娘ジャンルを盛大に広めた「ハピネス」の渡良瀬準や、だが男だの名言を生み出した「STEINS;GATE」のルカ子、性別秀吉でおなじみ「バカとテストと召喚獣」の秀吉等名キャラクターも枚挙に暇がなく------夜が明けるので割愛

などなど男の娘系は上げていけばキリがないですが、どれも多くの場合主人公を含め周りはその人が男ということを認知しています。
そうではなく、女装主人公&ヒロインありという設定は”秘密”というのが大事になってきます。
例えばイツキと啓太郎両方で約束してしまいダブルブッキングを乗り切ったり、サブヒロインが啓太郎への思いをイツキに打ち明けたり、”嘘”があるからこそイツキは存在するわけですが、嘘がどんどん彼を苦しめていくことになります。
でも、男だから、女だから話してくれた。つまり双方の状態で得た知識を使って周りの悩みを解消したりもできるわけです。
このジレンマがいい!
誠実でいようとすればするほど周りにイツキと啓太郎が浸透し、二重生活が苦しくなっていくわけです。
でも、イツキがいたからこそみんなと知り合えて、仲良く慣れたのです。
イツキと啓太郎の二重生活。それはいつかはバレてしまう嘘なのですが、どんどんバラしにくくなっていき、ごまかしもききづらくなる。
そんな中で、主人公が、ヒロインが、そして周りの人がどういった選択肢を取るのかというのがドキドキするのです。
あー、早く誰かにバレる展開こないかな。
バレてしまって、関係性がまた一転するというのが私大好きなのです。


例えば「おとぼく」の名シーン”あなたなら、鏑木家当主、鏑木みずほ様ならどうにかなるのでは!!”とか”チャック、空いてましてよ”とか、「るいとも」でいう”チュパカブラでたーーー!!”とか。そもそもこのバレたという事実から更に周りのヒロイン勢との関係性に変化が出ていくのが作者の見せ所で、主人公の目的のための共犯者や協力者になるというのが基本ですが、その仲間になるやり方も非常に多種多様。他にも敵対するが周りにはバラさない(当然その後惚れていく)という美味しい展開もありなわけで。つまりバレてからどうもっていくかというのが女装主人公物の中でも見どころの一つとなるわけです。もちろんばらして終わりやばらしたことによる問題を棚上げにしてストーリーを進行させると言った作品もあり一概には言えないわけですが。それを言うとそもそもはじめから知っているという女装主人公物に関しての利点といえばーーー長くなるので割愛

百合なのかボーイミーツガールなのか、複雑な関係性も魅力

この作品。ストーリー展開とともに恋模様の関係性も様変わりしていくのが面白いです。
イツキに恋する元不良筆頭に、サブヒロイン(かつ私の推しである)外鯨さんの親友倉敷牡丹との関係やイツキに恋に近い感情を抱いてしまうメインヒロインの葵など、ストーリーが進むごとに人間関係が複雑怪奇になっていきます。
3巻の終わりイツキの絶望が狂おしく愛おしい。
嘘をつき続けたことで変わっていく関係性と、新しくできる大事な友人。そして、周りの友人に認知されていく”イツキ”としての自分。
取り返しのつかない状況が進んでいくのに止められない、止めては行けないという状況が肝ですね。
更に葵は自分は自分の気持ちがイツキに向かっている事実に”彼女は女の子だよ!!”と焦ってしまい、セカンドヒロイン牡丹はーーーーあああ、この子めっちゃかわいいんですけど。
どんどん啓太郎に惹かれていってしまう彼女。素直になれない、、、けど好きなんですよ。
そして、啓太郎とイツキの関係性を一番疑っていたのも彼女なんです。
3巻終わりの展開は必見。
4巻が待ち遠しいです。
どうもあとがきを読む限りこの後重い展開が進むようで、読者のストレス耐性がついていけるか作者は不安な模様ですが、個人的には周りに理不尽な性格や悪意がないとわかっているためある程度安心して読んでます。
この期イツキと啓太郎と牡丹の関係がどうなるか。上で述べたように関係性の交錯が女装主人公者の醍醐味です。
そして百合に目覚めそうになっている葵は大丈夫か!
ある意味ギャグ要員とかしてラブ要因を親友に取られているがメインヒロインほんとうに大丈夫でしょうか。
先が気になる今日このごろ。

ところで関係性という話で言うと、女装主人公をヒロインが攻略していくという一風変わった女装主人公物の「花と乙女に祝福を」という作品があって、まぁニコニコ大百科のあらすじが秀逸で見ればだいたい内容がわかるのですが、あれもいい作品で.....(略



大好きな女の子を助けるためについた最初の嘘が膨らんでいき、取り返しの付かないことになる。
古今東西王道と言われる展開は求めている人が多いから王道なわけです。
可愛い女の子(と主人公)が織りなす恋物語をコメディで彩る秀作。
namo先生の「狼少年は今日も嘘を重ねる」ぜひお手にとって見てください

狼少年は今日も嘘を重ねる(1) (ファミ通クリアコミックス)

狼少年は今日も嘘を重ねる(1) (ファミ通クリアコミックス)




。。。。ところどころ暴走しました。だいぶ削ったので読みにくくはなってないはず。すいません。

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