ホラーっていうのは一大ジャンルだけあって、様々なジャンルやテイストにマッチするんですが、怖いの苦手な人間には少々難しいジャンルでもあります。
かく言う私もその一人。
怖いのを読むと夜眠れなくなることもしばしば。
ですが、ホラーってなんか人を引きつけるものがありますよね。
「見るなのタブー」っていうんですか?
特にミステリやサスペンスとはよく合います。
そして、私はエンタメミステリが大好き。
ということで、ホラーもエッセンスとして存在するけどそれが主題じゃなくて・・・っていう作品はよく読むんですよ。
前に感想記事を書いた怪奇ノベル「レイジングループ」もそのうちの一つ。
www.citrussin.com
んで、そんな怖くないホラーのですね、常に新刊買いをしている作品がありまして。
記事をいつか書こう書こうとしつつも、この魅力を伝えきれる気がせずに頓挫していた作品。
そろそろ記事だけでも作っておきましょう。
青春ホラーミステリ。
櫛木理宇「ホーンテッド・キャンパス」
- 作者: 櫛木理宇
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2013/02/14
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
ホラーが主題ではなく、それに惹かれた人間の心模様やライトノベルらしきラブコメが主題の良作です。
あらすじ
八神森司は生まれつき幽霊が見える。いや、「視えてしまう」体質である。
そんな物見たくもないのに、なにかできるわけでもないのに。
ただただ見えるだけ。
常に幽霊にかかわらないようにしていた彼だったが、高校生のとき霊媒体質を持ってしまった美少女「灘こよみ」に片思いしたことで事情がかわる。
同じ大学に入った彼は、こよみとお近づきになるためにいやいやながらオカルト研究会に入ることに。
だがそこはオカルト大好き部長のもと、「心霊現象のお悩みを解決する」サークルであった。
こよみのそばにいるために、八神は様々な怪奇事件へと首を突っ込んでいくことになる。
だがそこにあったのは、幽霊だけではなく、人間の”業”が起こす思いもかけない「動機」たちであった。
ホラーミステリではあるが、純ホラーではない。
まず忠告ですが純ホラーではありません。
”ライトホラー”ミステリです。
ホラーをベースにライトノベルの文脈に合わせかなりエンタテインメントを高めている作品。
ホラーを期待してる方は肩透かしになるでしょう。
ホラーテイストを期待する方にはあまりオススメしません。
あくまで「ライトノベル」や「青春ラブストーリー」の楽しさをホラー&オカルトを軸に楽しむ話であり、シリーズで読むことを前提としているライトノベルです。
名作ホラーコミック「百鬼夜行抄」の怖いところをライトにして、ラブコメ要素を強めた感じ。
- 作者: 今市子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
人間が人間だからこそやってしまう様々な問題。
その感情たちに引き寄せられる怪奇現象。
怪奇現象の「要因」を探っていくうちに明かされる、えげつない動機や有り得そうな「人の悪意」。
八神×こよみの恋物語もふくめ、「人間関係」に視点をおいたホラーミステリとなります。
人間の感情が導くミステリ
この作品の本旨は「人が起こすいろんな感情」だと思います。
様々な人間の感情が引き起こし、事件をおうごとに最初の姿からは想像もつかないような動機が掘り起こされていく怪奇事件。
一面から見るだけではわからない人間関係と、幽霊と謎を主軸に解き明かされていく「意外性」。
これはこれで、十分ミステリしていて面白い。
またホラーだけでなく、青春ラブコメもメインの一つ。
森司とこよみの「旗から見ていると両思いなのはバレバレなのに当人だけ気づいていない」系のじれったくてジリジリとして、それでいてニヤニヤとしながらも応援したくなるような。
まぁ恋愛ってのは謎だらけ。
好きな人の頭の中ってのは当人にとっては十分ミステリなんだよなー(*´∀`*)
一巻ずつ、ゆっくりと一歩一歩進展していく二人の、このじれったい距離感が素晴らしい。
新刊まで読んだ後、第一巻を読み直すと「あ、この二人ってここまで距離が縮まってたんだなぁ」ってなります。
周りを取り巻くサークルメンバーや準レギュラーたちも個性的で素敵。
やっぱサブキャラたちの個性って重要やいね。
怖いもの見たさの面白さ
櫛木理宇先生は、非常にどろどろとした、陰鬱とした、えげつない闇を書きます。
人と人の間で起こる妄執、執着、嫉妬、憎悪、悪意悪意悪意。
爽やかで甘酸っぱくてまばゆいほどの青春を送る主人公とヒロインの前に現れるのはいつもそんな「見たくないもの」ばかり。
そのコントラストの強烈さには、人によってはゲンナリするかもしれません。
でも、なんていうか、人の業は深いもので。
「見たくない」「えげつない」人の心の汚さを、
確実に。
見るなのタブーを破るとき、後ろ暗く、後悔と懺悔に満ちた暗い楽しみがあるものです。
関わり合いたくないどうしようもない人間の汚さも、一緒に体験してみたかった青春の輝きも、等しく「見ていて楽しいもの」として感じてしまう。
怖いもの見たさの面白さ。
これはこれでホラーの醍醐味だと思います。
まぁ、逆にいえば。
人のドロドロとして鬱屈として、すくい上げようもないような澱みが苦手な人は回避推奨な作品とも言える。
ある意味グロテスク。
まとめ
個性的なサークルメンバー、準レギュラーたちに囲まれながらちょっとづつ進展するじれったい青春ラブコメと、
人がエゴを隠しながらもがきあがき、やがて醜い悪意を露出させるホラーミステリが絡まったエンタメ作品。
そんなに怖くない、でも有り得そうな人間ホラーが、青春成長劇を見事に彩ります。
巻を経るごとに好きになっていくサークルメンバーたちの個性的なキャラクター性。
はよくっつけやとイライラしながらも、いつの間にか応援している二人の関係性。
そういう王道な、ホラーが苦手な人でも楽しめる「ホラー風味の」青春ミステリです。
櫛木理宇「ホーンテッド・キャンパス」
ホラー苦手な人にもおすすめの一作です。
- 作者: 櫛木理宇
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2013/02/14
- メディア: Kindle版
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