ある日友人がLINEでこう言った。
「コミックで怪奇譚系が読みたい。奇怪な話とかホラーとか」
でもこいつ、聞く前に有名所やネットで調べて、気になった作品は殆ど読んでたわけよ。
で、「それも読んだ、コレも読んだ、これは設定が好きじゃない、あれは絵がグロい・・・・・・」と返されて、すったもんだした挙句、変化球を投げて3つほど紹介したわけです。
で、ついでに紹介した3作品を記事にしてみるテスト。
あらまし
友人曰く。
「コミックで怪奇譚系のおすすめないかな? 俺が読んでなさそうなホラーなやつ」
とのことで、
で、「百鬼夜行抄」か「有閑倶楽部」読んどけと助言したら
「少女漫画タッチなのはパスで」
と言われた。
- 百鬼夜行抄は名作(断言)。怪奇譚系ホラーや妖怪好きならばぜひ読んで欲しい。
- 作者: 今市子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: Kindle版
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- 有閑倶楽部も名作(断言)。少女漫画と言われるとまずコレがでてきてしまう。個性的な学生集団が出逢う個性的な事件達の物語。
有閑倶楽部 1 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
- 作者: 一条ゆかり
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/07/29
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「それが読めたら、次は”ポーの一族”」って返そうと思ったのに。。。(´・ω・`)ショボーン
というかお前、例示に「もののべ古書店怪奇譚」上げてたが、あれはいいのか・・・・・
- 「レトロ×怪奇×主従」な猟奇的和風幻想譚。これもタッチは少女漫画寄りだと思うんだが。。。。
もののべ古書店怪奇譚 1 (マッグガーデンコミックス Beat’sシリーズ)
- 作者: 紺吉
- 出版社/メーカー: マッグガーデン
- 発売日: 2015/06/22
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とかく繊細な感情やり取りを得意とする作家は、作風も繊細な絵作りが多い気がする。。。。。
少年向けはグロいのが多くてなぁ。
とはいえ、生まれたときからお小遣い全額近くの書店に貢いできた私としては引き下がれない。
「花子と寓話のテラー」
=>過去に紹介してます
www.citrussin.com
「学校怪談」<=夢に出てきそうな話が多い。。。。というか読みきった日は眠れんかった
- 作者: 高橋葉介
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2006/04/01
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「黒鷲死体宅急便」<=不思議怪奇系では一押し
- 作者: 山崎峰水,大塚英志
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2002/11/01
- メディア: コミック
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「奇異太郎少年の妖怪絵日記」「奇異太郎君の霊的な日常」
「地獄先生ぬ~べ~」「脳噛ネウロ」
etc , etc.....
と、すぐに思いついた作品群を順々に上げていったが、さすがに有名所は漁ったのか「既に読破済み」との答え。
でっすよねぇ
ちなみに黒鷲死体宅急便は面白いのだが、如何せん電子書籍で出てないのでおすすめしにくい。。。。。(amazonさん、品数増やして)
ならばと
「悪の教典」「幽麗塔」「魔法少女・オブ・ジ・エンド」「カラダさがし」「屍鬼」「火葬場のない町に鐘が鳴る時」・・・・・・・・・
と思いつくままに読んだことのあるホラー(?)を上げていったところ、「それ、怪奇じゃなくてサスペンス・ホラーか、グロ系じゃん」と。
ええ、最もなご指摘です。
「アポカリプスの砦」「バイバイ人類」と打ちかけたメッセージをBackSpaceすることと相成りました。
ところで、「天空侵犯」と「彼岸島」はパニックホラーでいいんですかね?エロコメディと不条理ギャグじゃなくてホラーでいいんですよね。
さすがに我が友人。サスペンス・ホラーと怪奇系ホラーの怖さの違いぐらいは選り好みするか。。。。
いやさ当たり前といえば当たり前。
コレは私が悪かった。適当に答えすぎた。
しゃあない。ド直球ストレートは諦めて変化球に手を出そう。
つまり、「奇妙な物語」で「異質な思想」があり「ありえそう」と思う怖さがそこにあれば良いのだ。
ホラーでなくていい。
よし、「猟奇」だけど「グロくなく」、「寒気がする」上「怪奇なもの」
つまり探偵ものだな。
探偵もので奇っ怪な作品
木々津克久「名探偵マーニー」 人は思いがけない理由と事情で犯罪に走る。それは理解されず不可思議ではあるが、実に理の通った感性だ。
おかしな、と言うとそれこそ間違った見識だが、常人とちょっとだけずれてしまった犯罪者と言えば、「名探偵マーニー」の加害者がまず出てくる。
- 作者: 木々津克久
- 出版社/メーカー: 秋田書店
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「思いがけない」が「思ってしまってもおかしくはない」という動機の下、様々な犯人が登場する探偵もの。
マーニーの「証拠からの推理ではなく、周辺からの裏とりを重視」というスタイルとも相まって、独特のミステリ作品となっている。
ボサボサ頭の女子高生マーニー。
父の探偵業を手伝いながら、自らもちょっとした問題を「日当5千円、経費は別途」で請け負う。
少ない証拠からの推理でなく、ネットでのコミュニティや周辺人物などから聞き込みや調査で必ず裏をとり、様々なツールを駆使して人間模様を洗い出す。
一度依頼を受けたら、決まりゼリフを持って鮮やかに事件解決へと導いていく。
「日当5000円、必要経費別。 マーニーにおまかせを!」
外見は「名探偵」の名の通り推理ドラマだが、中身はマーニーの機転や謎解きではなく、依頼動機やその事件に巻き込まれた登場人物の心を描いているところが特徴。
「誰が」「どうやって」などのミステリによくあるWhodunit、howdunitではなく、「なぜ」「どうして」のWhydunitを中心とした物語構成がなされている。
作者が自ら宣言しているように、まさに様々な価値観が見られる人間たちの関係から来る複雑怪奇な人間模様が主題のミステリー。
(注:Whodunit = who did it: フーダニット 誰がそれ(犯行)を行ったのか . howdunit = how did it: ハウダニット どうやってそれを行ったのか . whydunit = why did it: ワイダニット なぜそれを行ったのか)
また、学内カーストを分かりやすくした4大派閥や、奇っ怪な趣味主張をもった友人たちなど、犯人にとどまらない「登場人物の魅力」が物語を彩っている。
事件は地味なものが多し、推理ものとしては力技感が否めない展開も多々見受けられるが、主眼としている「なぜ」については、様々な「ありえる」理由が飛び出して楽しい。
そもそも、巻末で「この物語はマーニーたち役者が演じる劇中劇である」というテイストのNGシーンやインタビューが書かれてたりと、明らかに「ロジック」を無視してでも「ドラマ性」を優先するという作者の宣言が見て取れる。
推理ロジックの甘さを指摘するのは、それこそ”無粋”と言うものだろう。
「人間とはなんて複雑怪奇なものなのだろう」という観点から見れば、十分怪奇系ホラーミステリとも言えるんじゃないかなぁ。
木々津克久「フランケン・ふらん」 なんでも治します、でも結末はあなたが望んだとおりにはなりません。
マーニーを紹介したときに、「はっ」と気がついた。
そうだそうだ、怪奇ではないがよっぽど怪奇ホラーな一作をこの人は書いているじゃないか。
木々津克久「フランケン・ふらん」
- 作者: 木々津克久
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一巻を読んだ時は背筋が寒くなったものだ。
所謂「猿の手」のような話である。
天才生物学者。その「死者をも生き返らせる」と呼ばれた外科手術から”通称:クモの糸”と呼ばれた斑木博士。
彼の手腕を頼って、斑木邸に訪れる財界人、権力者は後を絶たない。
しかし、そこに住んでいるのは斑木博士ではない。
博士に作られた最高傑作、斑木ふらん。
彼女は博士と同等からそれ以上の手術手腕をもち、優しさと慈愛に溢れた少女だ。
しかし、彼女の愛と感性は、決して常人と同じものではなかった。。。。。
話の内容は、大きく言えば同じプロットを持ち、「体にまつわる問題を抱えた依頼人が毎回現れ、彼女がその外科技術を以って問題を解決するという内容。(by wiki)」である。
が、その問題解決の方法と結果は、殆どが依頼人の欲するものとは掛け違う。
表面上まともに終わった話も、後日談が裏表紙に書かれ、色んな意味で奈落へ突き落とす内容になっている。
怪奇譚といえば、コレほど怪奇なコミックも少ないだろう。
今思えば紹介すべきだったなぁ。。。
キュートなふらんや、一見ハッピーそうなストーリー展開から、「地獄の道を善意で舗装した」奈落へ突き落とすラストシーンが軽快かつ軽妙な、グロテスクホラーコメディである。
反転邪郎「モコと歪んだ殺人鬼ども」 悪意は人からどこまでも歪んだ狂気を生み出してしまう
犯人側の歪みぐあいや、狂気具合を、となれば 反転邪郎「モコと歪んだ殺人鬼ども」がぱっとでてきた。
モコと歪んだ殺人鬼ども 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
- 作者: 反転邪郎
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タイトル通り、出てくるのは「歪んだ殺人鬼」たちであり、その猟奇性は全く理解不能であると言える。
私怨・私欲ではなく、快楽や義務による物が多く、「方法を思いついたから」とか「視聴者がリクエストしたので」など、一種悪趣味な動機が並ぶ。
ある意味、マーニーとは真反対の作品だ。
新人刑事の灰島柩は、何の因果か「特異犯罪捜査支援室」に異動させられてしまう。
そこにいたのは、警察に場違いな”無邪気な少女”。
しかし彼女は、生まれつき精神・肉体両方に高い能力を持つ「ハイギフテッド」として、”異常者犯罪”を捕まえる天才捜査員であった。
警視庁凸凹コンビが立ち向かう、異常犯罪ミステリー
こう言う猟奇ものは「如何に読者に不快な感情を引き起こすか」というテーマから逃れられない運命にある。
それを完全に無視して、淡々とすすめる(海外ドラマのクリミナル・マインドとか)ものもあるし、そのテーマを競うようにグロくしていくものもある。
猟奇殺人と少年漫画のバランスをとった作品といえば「サイコメトラーEIJI」が名作ですね。
サイコメトラーEIJI(1) (週刊少年マガジンコミックス)
- 作者: 安童夕馬,朝基まさし
- 出版社/メーカー: 講談社
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さて、「モコと歪んだ殺人鬼ども」は、このテーマにおいて、コミカル性と読み手に配慮した描写という中々に特有な味付けをしている作品だ。
にているので言えば、強烈な個性を放つ登場人物でおなじみ 松井優征「魔人探偵脳噛ネウロ 」がまず思いつくだろう。
あれは名作だった。。。。
魔人探偵脳噛ネウロ モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 松井優征
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モコはあれほど毒はきつくなく、そもそもネウロと違って主人公は「非力な一般警察」である。
ストーリー展開は、「一般人たちによる異常犯罪」であり、ネウロのような超常的少年漫画的バトル風景は見られない。
だからこその、モコ独特の良さがあると言える。
たとえば、大きな作品の黒幕である黒川幺郎の結末にしても、あるいは各猟奇殺人犯との対決にしても、割かれるのは「人の悪意と狂気」であり、逮捕からの結末も非常に”現実的”に近いと言え、
そこに”リアリティ”はなくても”臨場感的怖さ”がある。
非常に読みやすく、全五巻という短さも相まっておすすめしやすい一作。
猟奇と狂気に満ちた探偵対決モノとしては、例外的と言っていいほど「読みやすい猟奇殺人探偵もの」である。
山口譲司「江戸川乱歩異人館」 江戸川乱歩の耽美で奇妙で戦慄の推理ショーを現代のコミックへ
猟奇、奇妙、耽美、怪しくも美しい犯人と推理劇と言えば、「江戸川乱歩」を取り出す人も多いだろう。
「屋根裏の散歩者」や「人間椅子」など、「美しい」と「気持ち悪い」の狭間をキレイに踊ってくれる作品群が魅力的だ。
が、コミックでと言われたからにはコミックで紹介せざるを得ない。
分かりやすく、現代風でと考えるとやはりこれしかないだろう
山口譲司「江戸川乱歩異人館」
江戸川乱歩異人館 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 山口譲司
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/03/19
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ちょっとした好奇心が、引き返せない狂気に変わった「屋根裏の散歩者」
あなたに触れたかっただけ、願望を形にした男の末路「人間椅子」
私を眺める、夫の愛撫のまなざしの奥に冷たい空虚を感じたのです。「抱き男」
などなどなどなど。
まぁ、あらすじは書かんでもいいでしょう。
黒と白と赤と青と、様々な人間という色の絵の具をぶちまけて混ぜ合わせた独特の江戸川乱歩世界を、エロコメ作品を得意とする山口譲司が奇々怪々に描いたサスペンスミステリです。
中身は、江戸川乱歩短編集からチョイスしてるのかな?
表紙も凝っていて、近くで見ると普通の絵だけど、遠くから見るとドクロに見えるというだまし絵になってます。
江戸川乱歩と言われると「古い」「堅苦しい」なんて思ってしまう最近の人でも「コミック」と言うかたちにすれば読みやすい。
入門編としておすすめできる一作。
まぁ、乱歩ファンには「原作読んでからのオマージュとして楽しんで欲しい」と思っている人もいるだろうけど。
でも入り口は別に一つじゃなくていいと思います。
江戸川乱歩は、その耽美さをモチーフに「生理的に気持ち悪いけど惹かれてしまう」という独特の境界線をついてくる作品が多いです。
ならば、これは一種の怪奇であり、ホラーであるべきといえるでしょう。
詳しく語るには乱歩フリークでない私にその資格はないけれど、「コミック」で乱歩の世界に入門するといえる良作だと思います。
気になったら江戸川乱歩全集に手を出していきましょう。
あとがき
「限定された趣向に伴い、おすすめコミックを友人に紹介する」
というのは、小学校時代から行っている一種のゲームで、オタとしては「仲間増やし」の一環でもある。
とはいえ、「食い散らかすように読む」という私の読書スタイルだと、いざという時「ぱっと」出て来る量は少ない。
過去に読んだ話をメモ書きから思い出したり、Google先生やamazon先生にあらすじを聞いて思い出したりして回答することしばしば。
それを考えると、「怪奇モノ」から「探偵もの」にシフトできただけでも上々のゲームクリアだったかなぁと思う昨今。
まぁ、いきなり言われて、縛りのキツイ中ぱっと3つ出せただけでも良かったんじゃないだろうか私。。。
もう少し、いろんなジャンル読んだほうがいいのかもしれん。
が、しかし私は怖いのが苦手なので、あんまりグロ系とかガチホラー系は読みたくない。
学校怪談はヒロインの可愛さに釣られた。
あれはなぁ。。。。
もう夢に出てきて夢に出てきて。
しばらく夜、外出避けましたよ。誰かがついてきてる気がしてさぁ。。。。。
他にも、今思えば色々と出て来る。
例えば、我が青春の思い出、夢来鳥ねむ「HAUNTEDじゃんくしょん 」
- 作者: 夢来鳥ねむ
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は学校の怪談系おばけの定番をコメディ調に弄った傑作学園コメディだし、一回は読んで欲しい。
が、コレはホラーテイストなコメディ漫画であり、後半のシリアスもどこか少年漫画的で「怪奇譚」とはいいづらい。
でも、今考えると「学校の怪談」をオマージュするという意味においては十分怪奇的で納得の行く選出だったように思える。
この名作がkindleUnlimitedで今ならば読み放題中。
いい時代になったものだ。
さらに言えば、怪奇譚でぱっと思いつく名作で「スクール人魚」とかも上げて見るべきだったかもしれん
- 作者: 吉富昭仁
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別の機会におすすめするならば喜んで勧めてたところだが、怪奇譚と言われてちょっと言葉が出なかった。
こだわりが「同士を増やす機会」を損ねるならば、それは捨てかかるべきなんだろうなぁ。。。
さて、今回は「少女漫画テイストを外したコミック」が主題だったのだが、もし小説が許されたなら
アニメにもなった 綾辻行人「Another」
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は第一に上げていただろう。
さらに言えば、怪奇譚の小説で絶対に外せないのは
櫛木理宇「ホーンテッド・キャンパス」
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ホラーと青春ラブと人間の怖さと、コメディタッチな面白さがうまく融合した傑作。
現在の一押しホラー小説。
これは一段落したら感想記事書くかもしれんね。
(とかいいつつ、もう1年ぐらいこれの感想記事書いては消し書いては消ししてるんだけど)
その他、過去には米澤さんの「儚い羊たちの祝宴」や綾辻さんの「霧越邸殺人事件」なんかも紹介記事書きました。
www.citrussin.com
www.citrussin.com
まぁ、怖がりにも読みやすいホラーというのも色々あるんですよという話で終わります。