空を飛びたいと思ったことなんか、ない。
どうにもできない閉塞感。親との対立。過去からの逃避と決別。
青春の苦悩は人それぞれあまたあり、広い世界への憧憬を抱かざるを得ません。
私なんて未だ空を自由に飛びたいなーって思いますよ。
ということで、今回はサンデーで月一連載中のコミック。
田辺イエロウ先生作「BIRDMEN」の紹介です。
- 作者: 田辺イエロウ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/06/19
- メディア: Kindle版
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kindleもあるのが嬉しい。
もう家の本棚がいっぱいなんですよね。
さて、田辺イエロウ先生といえば「結界師」で有名ですね。
サンデーの看板作品の一つでした。
- 作者: 田辺イエロウ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/09/25
- メディア: Kindle版
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月間だからでしょうか。こっちのbirdmenのほうが個人的には好みです。
対象としている読者の年齢が上がった気がする。
あらすじ
思い通りにならない日常への苛立ちと不満を抱えたまま高校生活を送っていた烏丸英司は、ある日親友鴨田と学校をサボった際バスの転落事故に巻き込まれる。
バスの乗客は、烏丸、鴨田とサボった際に知り合った怜とつばめの四人。
死を待つだけの彼らの前に一人の鳥男が舞い降りた。
「死にたいか、生きたいか。どっちだ?」
奇跡の生還を遂げた4人だが、自らの体も翼が生える特殊な体質になっていた。
自分たちを救った鳥男が同級生の鷹山崇であるとしり、仲間に引き入れる。5人で部活「鳥部」を結成し、信頼できる大人として研究者の龍目直之を引き入れた彼らだったが、幾多の問題が立ちふさがる。
鳥男の目にだけ映る怪物「ブラックアウト」。
彼らを実験動物として捉えようとする世界規模の巨大学術機関「EDEN」。
そして、人間との心の距離が開き続ける「進化」
図らずしもリーダー的な役割を担うことになった烏丸はこの困難にどう立ち向かうのか。
「肚が決まった。このまま進む。未来は俺らのもんだ」
青春ですよ。SFですよ。そして何よりちゃんとジュブナイルしているのが良かった。
5人は全員名前に鳥の名前があしらわれていますね。
5人を助け、大人として導く役を持った龍目直之も苗字に竹をつけたらカゴメというのも意味深です。かごの中の鳥はいつ出やるんでしょう。
EDENも一枚岩ではなく、その上第三勢力も登場しなかなか緊迫感のある展開が続いております。
(私、6巻まで読み終えています。現在は7巻目)
主人公がいい
屈折し、日々の全てに不満を抱え、なまじ頭の回転が良いので理屈が先行し、周りに馴染めず勇気がでず。
烏丸英司は多くの屈折した青春を送った私にとってはとても共感できる主人公となっています。
彼が鳥男という大きな問題に巻き込まれ成長していく姿はまさしく少年漫画してますね。
最初は自分のことで精一杯だった彼が、徐々に鳥部の面々をどうにか助けてやろうとしていく展開はすごく見応えがありました。
鷹山崇は”欠けて”おり、他3人は子供っぽく、理性と論理で動ける烏丸が主人公というのも好み。
5巻での一大決心は彼の成長を象徴するかのようでした。
仲間の面々も個性的
個人的には怜がお気に入り。能力も含めて好きですこういうキャラクター。
もともとセンシティブで、仲間というのにすごく憧れをいただき鳥部を大事にしている彼。
わかりやすいトラウマと、家族関係への問題を持っているところも今後の展開をダイナミックにするでしょう。
能力が目覚めてからの性格の変化や、考え方の変遷がとてもゾクゾクします。
相棒枠の鴨田は明るくあっけらかんとしながら主人公を慕う脳筋キャラですごく癒やされます。
数々のエピソードで主人公が彼のことを突き放しながらも大切に思っていることがよく伝わってきますね。
重苦しい展開の中での清涼剤と言えるでしょう。
紅一点人間社会とのつながりを一番望んでいるつばめは普通の女の子って設定でしょうか。
自分だけ別の高校に通っているのを若干期にしています。
大切な友達が鳥部以外にもあり、まだトラウマがわかりにくいのも彼女だけでしょうか。
この期の展開に期待。
設定が作りこんであっていい。
SFは設定が命。非常に作りこんでいながらわかりやすい説明がなされていて読みやすいです。
まず鳥の設定からしていいですよね。
鳥同士のテレパシーと強い結びつき。その結びつきが強まれば強まるほど人間社会から隔絶していく重み。
そしてなんといってもブラックアウトです。
精神の結びつきを営み内で重要視する鳥ならではの表現だと思います。
進化のために自らを克服する成長過程。これが実際目の前に現れるというのがいいです。
どういつ設定で言うとペルソナ4のシャドウが近い。
やはり青春時代の苦悩や焦燥を形にすると物語性が高くなります。
更に鳥独自の能力も面白い。感覚が鋭敏な鳥が更に進化してたどり着く第一特化能力。
それぞれの違った能力にワクワクさせられましたし、1巻からのもやもやに説明がつき一気に解消されました。
特に主人公が先導者というのが素敵です。
厄介なめんどくさい彼の性格が、やがて人々を導くカテとなるわけです。
また、EDENが単なる悪役じゃないところも素敵。
彼らは科学者なんですよね。だから実験のためには善悪関係ないのです。
組織としてのイデオロギーや目的を優先するのではなく自らの知的好奇心を満たすために行動するのが科学者っぽくていい。
ぜひぜひFOXさんには頑張っていただきたいところ。
空を飛びたいと、能力を持ちたいと、なんとかこの理不尽な世界から開放されたいと。
謎の焦りと不満で頭が壊れそうになるあの時期。
その思いをストーリーに見事に落としきったエンタメ作。
田辺イエロウの「BIRDMEN」。おすすめです。
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