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城平京×片瀬茶柴のミステリコミック「虚構推理」が面白かった。虚構の真実に嘘で挑む、良作”言葉遊び”ミステリー。【おすすめコミック紹介】

真実がいつも強いとは限りません。
そして、鋼人七瀬は真実です。
だから私は合理的な虚構で立ち向かいます

もし全ての真実が最初にわかっていて、しかしそれが誰にも納得されないものだとしたら。
それは解決といえるのだろうか?
ということで、真実を語ってもどうしようもない事件を虚構と詭弁で納得させる
城平京先生らしい、珍妙奇天烈ミステリ小説「虚構推理 鋼人七瀬」のコミカライズ
城平京×片瀬茶柴「虚構推理」

虚構推理(1) (月刊少年マガジンコミックス)

虚構推理(1) (月刊少年マガジンコミックス)

城平京作品といえば、この前「名探偵もの」として「名探偵に薔薇を」を感想書きましたね。
あれも城平京らしい作品でしたね・・・
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そして、絶園のテンペストも感想記事追加しました
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あらすじ

勝つために惜しむものはありません
全力を持って嘘をつきましょう

この世には、目に見えぬ、人は知り得ぬ怪異がある。
昼間の世界には姿を見せず、多くのものは一笑に付すが、それでも正しく怪異はある。
とあるところに、片目と片足引き換えに知恵の神となった少女がいた。
また別のところでは、人の尽きぬ欲と業の犠牲者となった青年が不死と予知を手に入れた。
そして、ある町で妄想と噂が都市伝説となりて人を害する”鋼人”をこの世に出現させた。
怪異を殺すのは真実ではない。
これは、作り話を持って真実を倒す、虚構の推理物語。



真実は最初っからわかっているんですが、それを伝えても何の解決にもならないので、別の理屈をでっち上げて推理するという本末転倒ミステリものです。
さて、「これをミステリと言っていいのか」という議題は付きませんが。
まぁ城平氏らしい作品ですね。
6巻までは過去に城平先生が書いた原作小説「虚構推理 鋼人七瀬」の話をやりまして、7巻からはこの漫画のために小説を新たに書き下ろす形で進めているようです。
小説版も、7巻以降の話を随時出版するようなので小説版が読みたかったらそっちで追ってもいいかもしれないですね。
でも、(後述しますが)岩永の可愛さが素晴らしいのでコミック版おすすめ。

魅力的なキャラが織り成す推理劇

片目片足を失うことで、妖怪怪異たちの「巫女」たる知恵の神になった少女が主人公(探偵役)であるミステリー。
相方は、人間の欲望により犠牲となり生み出された”化物”たる青年。人魚とクダンを喰ったことで不死と未来予知をもつことになる。
(クダンは書いて字のごとく、”人”と”牛”が混ざった妖怪で、生まれてすぐ死ぬ代わりに絶対外れない予知を行う)

とにかく、主人公(探偵役)たる少女:岩永が可愛いです。
片瀬茶柴先生の絵作りが素晴らしい。
まず表情の一つ一つがコミカルに変わるところが可愛いですし、菩薩のような超然とした見た目からシモネタが飛び出すコメディキャラとしても面白い。
九郎の塩対応にめげずにアタックする一途さや健気さもキュンと来ますし、どうにか既成事実を迫る姿もコメディチックで素晴らしい。
怪異の相談役、知恵の神としてどこか超然としながらも、年頃の恋する乙女としての可愛さがあって。
でも、可愛いだけじゃないですよ。
岩永はかっこいんです。
ここでも片瀬茶柴先生の絵作りが本当に素晴らしい。
虚構に虚構をぶつけて打ち勝つシリアスな場面では、相応にカッコイイ表情で名台詞をビシっと決めてくれます。
「理屈なんて、真実なんて。ほら、幾らでも創造できますよ?」という理外のスタンスが痺れます。
「知恵の神」たる彼女が、「正解するだけでは解決しない問題」というややこしい話を、見事「詭弁」と「虚構」で覆い潰す。
探偵としては反則な「有りもしない作り話」をあたかも真実であるかのように語るには、やはり説得力が必要。
そこら辺、岩永の超然としたキャラクター性が生きてきますね。


副産物ですが探偵役たるヒロインの魅力と個性が、難解な物語を面白おかしく伝えてくれて、全体が非常に読みやすくなっている印象。
城平京らしい軽妙な言い回しや一風変わったストーリーが、片瀬茶柴の手によってコメディちっくに語られています。
やっぱ探偵者はキャラも大事。

はじめからわかっている真実は、解決の意味をなさないミステリー

妖怪の巫女・知恵の神たる岩永はそこで起こった事実は妖怪や幽霊から聞き込みできるわけで。
どんな謎めいた事件も出来事も、現場に行って幽霊に聞けば何が起こったかすぐに分かる。
でもその事実や真実は、解決の役にはたってくれない。
「問題の解決」は常に万人の納得が必要で、そして多くの人が「簡単な回答」に納得しない。
だっていくら真実を話しても、「そんなわけないじゃん!」ってみんな言うんですよ。
実際にあったことなんですが、誰も認めてくれない。
誰も認めないから、事件は終わっているのに事態が解決しない。
じゃあ「面白くて、真に迫って、納得できて、機微に富んだ虚構の話」を推理してみんなに納得してもらおう。
っていう、探偵ものです。

いやはや本当にこの人の作品は捻くれてて面白い。
「最初から真実がわかっているのを屁理屈で納得させる」というのは、嘘解きレトリックに似てますね。
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とはいえ、レトリックの方はまだ「真実を解いた過程をごまかす」もので真実は真実でした。
こっちは違います。
真実は解決の意味を成さないので、「真実に置き換わっても問題ない嘘」をつく話です。


真に迫る、納得できる、誰も反論できない嘘を如何に創るか。
確かにこれは真実は探求しないものの、りっぱなミステリですし推理物でした。


漫画だからこそ絵がついて理解しやすい、言葉遊びと屁理屈合戦

城平氏もおっしゃってますが、この作品は大量の文字で言葉遊びを重ねて、嘘と虚構を持って作り話に辻褄をあわせていく屁理屈大合戦です。
真実に一切の要はなく、必要なのは「誰もが認める納得」です。
なので、かなりの屁理屈を様々な言い訳とともにぶつけ合うため、ちょい文字だけではわかりにくいところがあります。
やっぱこういうギミックは絵のほうがわかりやすいですね。

例えば、七瀬討伐のために虚構でつじつまを合わせ万人が納得できる結末を用意していく・・・謂わばこの作品の本番シーンがあります。
一番盛り上がる部分なのですが、現実に行われているのは、謂わば掲示板でのレスバトル論争なので、文字で追うだけだと疲れやすい。
主人公たちが何に追い詰められていて、何を起点に盤面をヒックリ返したか。そういうことをしっかりと判断するためには、読み込まないといけないわけですね。
まぁ、そこら辺コミックはいいですよ。
論争中に探偵:岩永琴子がイメージ世界にて白板で関係図を書いて整理していきますし、ただの妄想レスバトルも漫画では活き活きと動き回ってくれます。
特に話の進行に伴い、真実と嘘、双方の狙いがごちゃごちゃになっていくので、こういうギミックがあるとやはり理解しやすい。
ちゃんとキャラクターがイメージ世界で動きながらこの「辻褄合わせの進行」をわかりやすく提示してくれる。
こういうミステリはコミックの良さが際立ちます。

総括

魅力的な妖怪の巫女が、屁理屈と虚構の物語で、真実を嘘によって打破していく探偵もの。
「真実なんかより求められている嘘があるんだよ」という、裏道を突っ走った奇天烈ミステリです。
ヒロインの可愛さと、言葉遊びの面白さ、「一見したらどうしようもない解決できない問題」を何でもありで鮮やかに解決するストーリーが楽しい。

もともとの原作である「鋼人七瀬」編が6巻でまで終わりまして、一段落(7巻は短編集)。
「さて、ここから新規に物語を描き下ろしましょう」という段階なので、読みはじめにちょうどいいかと思います。
城平京×片瀬茶柴「虚構推理」

虚構推理(1) (月刊少年マガジンコミックス)

虚構推理(1) (月刊少年マガジンコミックス)

おすすめです。

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