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筒井大志「ぼくたちは勉強ができない」。捨てキャラなし。全ヒロインの魅力を余すところなく表現し続ける王道にして異端の良作ラブコメ

現在ジャンプのラブコメ枠にて、非常にテンポよく、さらに捨てキャラがいないラブコメをやってる萌え豚のオアシス的存在
筒井大志「ぼくたちは勉強ができない」

ぼくたちは勉強ができない 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

ぼくたちは勉強ができない 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)


ニセコイスピンオフである魔法少女ラブコメ「マジカルパティシエ小咲ちゃん」書いてた人ですね。
絶好調に盛り上がり、全キャラ愛おしく、正直続きが気になって仕方ないのでそろそろ感想


あらすじ

「出来ないやつをわかってやれる男になれ」
「出来ないやつの気持ちがわかるのは、出来なかったやつだけだから」
親父はいつもそう言って笑ってた

高校3年生:唯我成幸は秀才である
自らの才能の無さを必死の努力でカバーし、積み上げに積み上げた「全教科成績上位」の輝かしい実績。
それもこれも、貧乏な家庭をちょっとでも助けるため。
彼は大学進学の一切の学費が免除される「特別VIP推薦」を狙って、青春をかなぐり捨てて勉強に没頭していた。
しかし、彼は秀才である。
天才には勝てない。
そしてこの高校には2人の天才がいた。
一切の過程を無視して答えにたどり着く理数系の天才「機械仕掛けのおやゆび姫」緒方理珠
片手間で書いた小論文でも人を号泣させる文系の天才「文学の森の眠り姫」古橋文乃
努力ではどうしようもない境地。決してたどり着けない才能の差。
どれだけ積み上げても、どの教科でもトップになれないジレンマ。
それでもVIP推薦のために、彼は是が非でも成績最優良者にならなければならない。


そんなある日、唯我は校長から呼び出され”ある提案”をされる。
「唯我くん。十分な実績を持つ君に、VIP推薦を認めても良い。」
降って湧いた夢のような提案。
しかし、校長は緒方理珠と古橋文乃を校長室に招き入れながらこういった。
「ただし、彼女たち二人を志望校に合格させることが条件だ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
君には教育係をやってもらいたい。
理系の天才「おやゆび姫」は文系の才能が、文系の天才「眠り姫」は理系の才能が壊滅的だったのだ。
それでも
緒方理珠。彼女には大好きなものがあった。大好きを諦めないために、彼女は文系の大学へ行きたかった
古橋文乃。彼女は夢があった。夢を諦めないために、彼女は理系の大学へ行きたかった。
たとえ、自分に全く才能がなかったとしても、自分の人生を諦めたくはなかった。


「なぁ、成幸。出来なかったって悔しさは忘れちゃいけねぇ。お前は出来ないやつをわかってやれる男になれ」
出来ない悔しさも、諦めたくない気持ちも。誰よりも唯我自身が知っていたから。
期間は1年。必要な成績は崖っぷちも崖っぷち。
それでも、絶対お前らのこと、幸せにしてやるから!!


勉強を重ねてつながる絆、徐々に接近する三角関係。そこに幼馴染も先生も参戦してきて。
秀才と天才の夢に向かう挑戦は、甘酸っぱくて、そして楽しいことがいっぱいのラブコメディ!!


区切られた期間の中で、駆け引きが続くハーレム系ラブコメ

この題材で、しかも(後述しますが)ヒロインが大勢いるのに全キャラちゃんと深掘りするスタンスで、期限を1年と区切った。
まずはその勇気ある決断に感動を述べたい。
「弱点教科を専門とする大学への合格」という目的に向かいつつ、メリハリがあって起伏に富んでいて、さらにテンポが凄く良いラブコメが楽しめます。
さらに「才能を活かすよりも、自分の人生のために勉強するんだ」という根柢にあるテーマがしっかりしていてとても面白い。

テンポがね。すごく良いんです。
ダレない。ズルズル引きずらない。思わせぶりな行為や突発性難聴で本筋を歪めることもない。
そうなってくると何がいいって「無駄なヘイトを向ける要素がない」ってことなんですよ。
焦っているとは言え、そんな簡単な慮りもできんのか???とか、さすがにこの対応はないんじゃねーか!??とか、そういうキャラを嫌いになる要素がないんですよ!
これねーすごくでかい。

主人公やヒロインにやきもきするのは、まぁラブコメとして当然。(所謂五代さんと響子さんが付き合ったら終わる問題)
なんだけど、そのヤキモキ感というかすれ違いには、一定レベルの「ああ、でもその気持ちもわかるわぁ」がほしいわけよ。
さらに言えば、やっぱり無駄に作品の都合で引き伸ばし工作を図られると、ストーリーが破綻して苛立ちを覚えるっていうのもあるよね。
目標を1年に区切り、その中で揺れ動きながら進んでいくストーリーにしたのはまじで英断だと思います。


だからこそ1ストーリー1ストーリーが濃密というか・・・・、表現が難しいんだけど飽きずに楽しんで読めるのよ。
まぁ逆に終わりが近くなっていく悲しさっていうか、例えば2巻で6月に入るから下手すると8巻いくまでに完結しちゃうんじゃないかという寂寥感っていうか。
(まぁ全員違う大学に入って一旦リセットからの再スタート。大学編始めてもいいと思いますけどね。どうですか筒井先生。大学編やりません!? )


もしかしたら、ジャンプお約束の「人気出てきて無理やり引き伸ばしー」的な展開になるのかもしれんけど。
そういうのはやめてほしいなぁ。せっかくこのテンポだからこその魅力。期間が決まっているからこその全力恋愛投球が見れるんだし。
それをなんかでずらしちゃうのは・・・良くないと思います(´・ω・`)
あと、同じ大学に入って・・・とかは絶対やめようね(´;ω;`)。夢のために勉強するっていうコンセプトが崩れるから


誰もが誰もを思いやっている優しい世界

心に優しいラブコメ(・∀・)
みんながみんないい子なんですよ
当初悪役チックに出てきた前任の教育係でさえ、「子どもたちの幸せのために」必死になる先生で。
その奥深さが、どんどん深掘りされるに釣れ、あれこの先生超かわいい!!ってなるんですよ。

ヒロイン勢はお互いを友達のように好き合っているし、それでいてお互いが唯我くんのことを好きなのをほんのり察知している(この乙女心的雰囲気も( ・∀・)イイ!!)
だからこそ「ああ、みんな幸せになってほしいなぁ」と、心から思える。
「ああ、きっと何が起こっても、最悪なことにならないだろうな」と信じられる。
その温かさこそが、安心してよめるラブコメの魅力につながっているんですよ!!(断言)

そして特筆すべきはキャラの掘り下げと感情描写ですね。
表情が豊富な文乃だけでなく、一途活発系なうるかだけでなく、無表情系の理珠まで感情豊かに描写されていて。
言い方がありきたりですが、みんな活き活きと紙面の中で動いているのがわかります。
だからこそ、「きっとこのキャラが唯我とくっついたら~」みたいな妄想も簡単にできるし、その妄想を上回るような新たな魅力を描いてくれるから続きが気になるんですよ!




負けヒロイン、捨てヒロインがいないジリジリ感と誰を応援しても報われる多幸感。

いちご100%の東西南北戦争でもココまではなかったと思うレベルの絶妙な4角関係。
誰が勝ってもおかしくないレースです。
正直ここまでキャラを深掘りしていくのは、まじですごい。
さらに言えば、どう考えても位置的にはサブヒロインである先生も、これまた可愛い。
いや、先生メイン回の凄まじさがやばすぎてがたっと4角が5角になってしまった印象。

これは・・・よろしくないぞ。誰を応援すればいいんだ(´;ω;`)


普通、最初のストーリーを見る限りはラブコメなんだから1話で出てきて根幹に関わっているはずの「理珠」と「文乃」がメインヒロインであるはず・・です。
さらに言えば、1巻の中身からすると最初に夢の焦点を合わせ、見た目も属性も正統派の文乃がメイン。人気は属性過多な理珠が引っさらうという作品かな?と思わされます。

でも違う
まず、遅れてこの3角関係に幼馴染で体育系天才の「うるか」が来ます。普通なら当て馬ヒロインです。
しかしこの「うるか」、お約束的にも立ち位置的にも正ヒロイン系幼馴染で、凄まじいヒロイン力を引っさげて登場します。
文乃の位置を奪い去り、理珠の人気を脅かし、圧倒的片思いヒロイン力を持って一気にこの恋愛関係のTOPに躍り出ました。
もはや文乃は脇役サポート役となり、理珠とうるかの三角関係押し合いが始まります。
驚いた。まじか・・・正ヒロインが後から登場するの???
とおもったらまた違う。
更に続けて、イマイチ魅力を押し出せていなかった文乃に対し、立ち位置を変える事によって一気に魅力あふれるキャラに仕立て上げてきました。(後述)
もはや、文乃は「悩める主人公のよき相談相手」であり「傍観者」でいながら「淡い無自覚の恋に揺れ動かされる」立派な正ヒロインです。
真面目に三角関係で嫉妬やヤキモキするのはうるかと理珠に任せ、別アプローチから主人公とのルートを構成してくという手法に出たわけです。
一旦引き下がった文乃が更に強大なヒロイン力を身に着けて、文乃も理珠やうるかとがっぷり四つに組みに来た。
しかも3角関係には入っていないため、一切の役割かぶりなし。これはすごいことですよ。
さらにさらに
どう考えてももう正ヒロイン参入には遅い登場となる「先生」と「先輩」が登場し、これはさすがに・・・と思ったら。
堂々の立ち回りを見せながら見事な深掘りとともにガッツリメイン回やってくれちゃうわけですよ。



・・・・何が起こってんのかまじでわからん。誰がメインなんだか作者も決めきってないんじゃないだろうか。
全てのヒロインにかぶらないストーリー役割が与えられており、全員を端役にせずにちゃんと目立った活躍を与え、読者と主人公に対して裏から表から側面から上から下からあらゆる方向を用いて好感度を上げていく。
なるほど。これは次世代のラブコメですね。


正直作者のスポットを当てるバランス感覚の良さが狂人じみていて本当にビビる。
よくもまあこんな難しい舵取りを行えるなぁと。

ここまできっちり描かれると・・・・終了本当にどうすんだろ。
誰か一人選ぶって、すっごい難しいぞこれ。まだいちご100%は一騎打ちだったしマシだったとも言える。
いやぁ、多分「俺達の人生は大学後もまだまだ続く」系エンドなのかなぁ。
大学編まじめにどうですかね?やっぱり全員別の大学ってのは話作りにくいのかなぁ・・・
あとアナザールートも欲しいなぁ。VITAで全員ルートやりましょうぜ(・∀・)

文乃の見事な配置換えにびっくりした

正直「正統派ツンデレロリ巨乳メガネっ娘属性過多」な理系ちゃんや、「褐色スポーツ少女スパッツ幼馴染」体育系ちゃんに比べると弱かった文学森の眠り姫こと文乃ちゃん
しかし、そこがこの筒井先生の素晴らしい手腕。
「友達同士の恋の行方をハラハラしながら取り持つ相談役」としての立場を持ってくることで、文乃の魅力が一気に増しました。


ツンツンしつつ一番デレてる理珠、ストレートな恋心を向けるうるかに比べ、文乃は「無自覚な淡い恋心」という中々難しいテーマを背負うヒロインでして。
そのため1巻段階では非常に影が薄いと言わざるを得ませんでした。
それが、青春の恋特有のアワアワ感に振り回される主人公の良き相談相手、相棒としての地位を手に入れた途端急逆転。
こんなに可愛かったのか!!!!!
この転身は本当に素晴らしいと思いました。

表情がコロコロ変わって、いろんな3角関係的シガラミを外から見ているゆえに、友達同士の動作にあわあわして。
主人公の「女心がわからなさ」にイライラしながらも、時折見せる彼の男らしさにちょっとドキッとしたりして。
表情の多彩さが見ていて全く飽きない。
なるほど。うん。

文乃ちゃんかわいい!!!!


総括

どんどん推しが変化して、1エピソードごとにキャラの魅力に振り回されて。
そんなとても楽しいラブコメです。
とにかく1つ特徴を言うならば「キャラの掘り下げ方が上手い」。これに尽きるかと思う。
ストーリーを追う毎に絶えず描かれる様々な「このキャラはこんなところも可愛い」という魅力あふれる描写が心を捉えて離しません。


ご都合主義、ストーリーの起伏の甘さ、主人公の王道故に没個性。
まぁ、色々気にする方はいるでしょうが、そんなことは正直まったく傷にもなっていない。
これだけのキャラ描写、これだけのバランス感覚。
美しいまでの王道ラブコメにして、誰一人ヒロインを取りこぼさない異端のラブコメ。

筒井大志「ぼくたちは勉強ができない」

ぼくたちは勉強ができない 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

ぼくたちは勉強ができない 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

単行本派なんですけど5巻まだですか?
あしゅみー先輩の今後の絡ませ方が気になります。

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