citrussinのチラシの裏

ゲームや読書感想、日々のことを適当につづる日記。TwitterID @sinensis197

隠れオタクの!リア充にはわからないかもしれんけど!!それでも”好きなんだ”!!!丹羽庭「トクサツガガガ」は特撮やオタクの知識や日常を描きながらも現実と板挟みされる良作コメディコミック

大切なことは全て子供の頃に教えてもらった
あのヒーローたちに。

現在はニチアサのスーパーヒーロータイムにて続き続ける系譜。
怪獣映画や、変身ヒーローや、パニックものもゾンビも怪談も、深夜のコアなストーリーまで。
子供の心に夢と希望と勇気を育て、大人に感慨と新たな楽しみを植え付けてきた特殊撮影技術使用(SFX)もの
名を持ってそのまま「特撮
仮面ライダーシリーズ、スーパー戦隊シリーズ、ウルトラシリーズ。
ゴジラにモスラに、牙狼も赤影も。
学校の怪談さえも。
上げるとキリがない、とてもとてもコアで、魅力的で、心躍るヲタクの世界。

ということで、そんな熱き特撮の世界に魅了された大きなお友達の一員。
仲村さんを取り巻く隠れオタク有る有るコメディ&シリアスホームドラマ
丹羽庭「トクサツガガガ」

トクサツガガガ(1) (ビッグコミックス)

トクサツガガガ(1) (ビッグコミックス)

面白かったです。おすすめ。


注:この記事は「トクサツガガガ」の軽いネタバレを含みます




あらすじ

仲村さんは26歳のOLさん。見事な擬態とお手製弁当等で職場では女子力が高い”素敵女子”なんて思われているけど、部屋には誰も入れられない。
日曜朝には必ず起きてヒーロータイム。
おもちゃ屋には新作チェックに行き、部屋の中は剣やフィギュアで寝る場所にも困る。
そう!彼女は“女死力”たぎる「特オタ(特撮オタク)」!
でもオタバレが怖くて、一人ぼっちでコソコソしながら生きてるよ。
人目につかないフィールドのカプセルトイを求めて街をさすらったり、一人カラオケで今季の特撮OPを絶叫したり…
人生に必要なことはいつだってヒーローが教えてくれた!!
幾多のヒーローの言葉を胸に、今日も進むよ「特オタ」道!


特撮とかアニメとか、まぁまだまだ「子供向け」「大人は見ないもの」なんて風潮は根強いですよねー。
そりゃ行き過ぎには注意したいとは思うけれど、「しっかり作られた物語」や「総合芸術としての娯楽」にケチつける謂れはないと思うんですがね。
「僕/私の好みではない」ならばOK。好みは人それぞれ。当たり前。

そして、特撮ですよ特撮。
ニチアサ。スーパーヒーロータイム。子供向けだからこそ胸打たれる正義がそこに有る!!
(個人的にはアニメが好きなのでエルドランシリーズか勇者シリーズ復活してほしいっす。)
そして、深夜特撮や映画、怪獣ものに学校の怪談。
SFXなんて行ったらなんかハリウッドかどっかのイメージですが、日本の特撮と言えば「子供に正しさとはなにかを感じてもらう」ものや「人生の指針となるストーリー」が多い。
魅力を感じて当然なのかなぁと思います。

主人公仲村がね、仕事終わりに同僚と電車に乗って座ってるんですよ。
疲れたなぁ。。。。と思っているときに足を引きづったおじいちゃんが乗ってくる。
で、みんな座っている人は目をそらすんですよね。主人公も同じ。
「譲るべきかもしれないけど譲りたくない」
おじいちゃんも、別に強要したりせずに別の車両に見に行こうとするんですよ。
ーーーーああ、譲ったほうがいいんだろうな。でも仕事で疲れてるしなぁ。。。。
でも、でもそのとき、仲村の脳内で昨日見たヒーローのセリフが浮かび上がるんです。
「それはいいわけだ!自分が苦しいことは、弱いものを見捨てていい理由にはならない!!!」
かっっこよすぎかぁーーー!!!!
自らの憧れるレッドを裏切れず、そっと立って席を譲る主人公。
憧れに背をむけることは出来ない。オタクってそういう生き物。

いやぁ、いいもんですよね。ニチアサ。
思わず感動のシーンを脳内リフレインしてしまい同僚に心配される仲村なのでした。

辛い日も悲しい日も、彼らがいるから大好きになれる

ーーーー諦めじゃモノを作ることはできない。白狐丸だって言っている「意地だよ、意地」って。
ーーーーそうだ。それは情けないことじゃない。そうでしょ、エマージェイソン。
ーーーー変じゃないんだよ。戦えない子供の代わりに大人と戦ってくれる。いつでも子供の味方をしてくれるのがヒーローだ。

人生、特に社会人になるとあらゆるものから逃げたくなる辛い日があります。
でも、そんなとき、そんな場所で、OL仲村は幾多のヒーローを思い浮かべ、それを作っているアクターさんや監督たちへの敬意を思い出します。
辛い時、悲しい時、でもやらないといけない時。
あらゆる場面で、ヒーローから力をもらう。
仲村自身はどうしようもない特撮オタクなんだけど、「寄りかかりたいときに正しい道を示してくれる大きな存在」を常に忘れません。
支えをもって毎日を乗り切るストーリーは、たしかにコメディなんだけど、勇気と希望に満ちたドラマとして楽しめました。


作中作がすっごい面白そう

というか、作中作のかっこよすぎるヒーローたちに震える。
やばい。
作者が”わかってる”というのと、やはり仲村含むオタク登場人物たちが選んでいく”支えとなるワンシーン”がぐっと来ます。
泣きたくなるような、絶望したくなるような、そんな何かを倒してくれるヒーローたちがそこにはいて、作中作なんだけどまるで1シーズン見ているかのように愛着が湧いてきます。

悪の組織に作られた経緯を持ちながらも市民を守る「エマージェイソン」。
動物&オリエンタルモチーフの今季ニチアサヒーローシリーズ「獅風怒闘ジュウショウワン」
深夜特撮で、グロ有り、血しぶき有りの硬派(多分元ネタは牙狼-GARO-)ヒーロー「白狐丸」
リメイクされて人気に再度火が着いた忍者ガジェットモノ「雷電」
などなど。
様々な状況で語られるヒーローたちの一押しシーンやキメがかっこよすぎてとてもおもしろそう。



一癖二癖あるヲタ仲間たちと共に生きて共に語ろう

ストーリーが進むに連れ、隠れヲタだった仲村にも徐々にヲタ仲間が増えていきます。
コレがまた楽しい。
特に、生粋の特撮ヲタで、鬼気迫る狂気もたまに感じる見た目常識人の吉田さん。
もう30近く、仲村が年の話をすると狂気に満ちた笑顔を振りまき「え?高校って何年前かって?血を見たいようですね」
写真撮影スキルや、ヲタの沼へ一般人を引き込む教唆を行うなど、濃い濃いキャラクターが大好き。
この人の「究極の駄作や問題の多い作品をおすすめする」とか「人を引き釣りこむのに綿密な計画を立てる」とか。
有る有るすぎてよく分かるわ。
あと、「作品を見た後に誰かと語りたい症候群」とか。
仲村よりもより経験有るヲタという感じで、個人的には吉田さんのほうが親近感あります。
この二人の掛け合いが結構好き。


見た目ヤクザの魔法少女好きお兄ちゃん(任侠さん)とか、ジャニオタを必死に隠す北代さん、小学生の代弁者にして名台詞製造機ダミアンなど。
濃い濃いメンバーが集っていって、ワイワイ賑やかになっていくところもこの作品の魅力。

カラオケ回は、まさにこの「普段は影に生きるオタクたちが集まってはっちゃける」っていうすごくよく分かる話で、特にお気に入り。

重いテーマも含みます。

特に母と娘と毒濁刀という裏設定。
仲村の母親がね~、全く理解がないんですよ。
別に悪い人ではないんだけど。
「特撮なんて女の子がみちゃだめ」「女の子は可愛いものが好きであるべき」「このこは私を裏切ったりしない」
なんていう無言の圧力が強すぎて。
そのため仲村にとっての鬼門。トラウマ。
いかにこのねじれた親子関係を、、、、というのが裏のテーマであったりします。

毒濁刀はジュウショウワンにでてくる「ふるってはいけない禁忌の必殺剣」であり、現実世界では仲村が手段として持って入るが絶対に使いたくない「母を突き放すという選択肢」のいこと。
親バレをした時家族関係はどうなるのか。

中々重いテーマも含んでいる作品で、彼女の選択と母の選択にドキドキしたりもします。


総括

世間からは「いい大人が」って言われることを承知で、それを隠しながら生きている。
でも好きなんだから。
好きだからしょうがないんですよ。
そんな主人公と仲間たちが、日々”支え”に助けられながら学んでいく
その学び取った答えは、時々ハッとする読者自身への問いかけであったりもします。

笑って泣けて、大人の世界のいろんな疑問や問題や不条理を特撮という支えを持ちながら一つ一つ解決していく。
コメディでありながら深いドラマをもった良作でした。

もし興味があれば、如何でしょうか。
丹羽庭「トクサツガガガ」

トクサツガガガ(1) (ビッグコミックス)

トクサツガガガ(1) (ビッグコミックス)

おすすめです。

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