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おすすめコミック:人の嘘がわかってしまう少女と、人の行動を洞察してしまう青年の”でこぼこコンビ”が織りなす昭和探偵奇譚 都戸利津の「嘘解きレトリック」紹介

キュンキュンくる(萌える)女の子を探しているならば少年or青年コミックだろうが、キュンキュンくる青年を読みたければ少女漫画を読めばいい。
面白い少女漫画は老若男女どの世代どの性別にも刺さるものがある。
ほんとにいいキャラ書くよね。

ということで、普段はズボラで適当だがやる時はやるかっこいい青年と、田舎から出てきた「嘘がわかってしまう」女の子の大正ロマン(正確に言えば昭和初期)謎解き探偵物語。
都戸利津先生の「嘘解きレトリック」読み終えました。

嘘解きレトリック 1 (花とゆめコミックス)

嘘解きレトリック 1 (花とゆめコミックス)



少女漫画って、忌避する男の人いますけど。
「情緒」や「繊細な感情の行き交い」、「人の関係性」というのを重視したテイストが多く、大人でも楽しんで読める作品が多いです。
なので、特にホラー系とかミステリ、あとは人と人が織りなす大河モノやサスペンス系はすごくいいものが多い気がする。
なんていうか、ホラーやサスペンスとかって言うと少年コミックだの月刊青年コミックだのだと「エログロ」や「スリラー」、「お色気要素」みたいなのが多くてねー。。。。
それはそれで好きなんですが、繊細さも欲しかったりするのです。



あらすじ

時は昭和初年。
とある山中の村落に生まれつき「人のウソが聞き分けられる」能力を持つ少女が生まれた。
まだ”それがどういうことを意味するか”を理解できない少女は村の住人達の嘘を言い当て続け、理解できるような年令になる頃には周りから気味悪がられ疎まれていた。
母と父は優しくしてくれるが、周りからは迫害される日々。
「あなたは嘘がわかるかもしれないけど、あなたが嘘をついていないって誰が証明できるのよ!」
数少ない友人だった女の子にそう問い詰められた彼女は村に居場所がなくなり、生まれ故郷か都会に逃げ出すことにした。
「誰も自分の力を知らない場所に逃げて一からやり直す」
そのために。
そして、その町「九十九屋町」で彼女、浦部鹿乃子は運命に出会う。
空腹で行き倒れたところで出会った貧乏探偵の祝左右馬。
彼はその洞察力の鋭さと人を喰ったような性格と頭の良さから周りから浮いた存在だった。
「僕はね、嘘が見破られるなんてことよりも、”本当なんだ”って気持ちがわかってもらえないほうが怖いんですよ」
”嘘”を聞き分けられる少女の能力を使い、人を助ける。
これは優しい探偵と、探偵に勇気をもらった少女の謎解き探偵物語。



嘘を見破れる少女と、洞察力とでまかせで人を説得してしまう探偵の凸凹コンビが織りなす昭和レトロモダン。
浦部鹿乃子と祝左右馬の関係性の進展や二人の考え方の変遷が非常に繊細に描かれていく様は必見。
ストーリーラインも非常に丁寧な作りで分かりやすく、こういった謎解きもの初心者でも素直に楽しめる出来。


二人の関係性が一押し

嘘を見分けられるからこそ、本心がわかる。
そのことに実は祝左右馬も勇気をもらっているという関係性がいいのです。
鹿乃子は物凄く自分の能力を嫌悪していたけれど、左右馬が持ち前の洞察力でその気持ちを一つ一つ理解して解きほぐしていくのは、たしかに少女コミックチックな恋愛関係といえるかもしれない。
でも、そういうことを超えた”絆”がどんどん二人の間に結ばれていく繊細な描写がこのでこぼこコンビをより魅力的なものにしているなーと。

コロコロ表情が変わり、村といたときに比べて”ああ、こんなふうに笑う子だったんだよね”というのが見えてくる。一喜一憂して頑張る浦部鹿乃子という少女が本作の主人公であることは間違いない。
けど、その裏で「実は世界から追い出されていた天才」が、"嘘がわかることで本心をわかってもらえた"という救いを見つけたという物語が合って。浦部鹿乃の成長物語であると同時に、祝左右馬にとっての運命の出会いの物語という二重構造で、その繊細なストーリー展開がすごく良かった。
嘘がわかることや超人的な洞察力を持つことで、時には勇気づけられたり、後悔したり、人と繋がったり恨まれたり。単なる謎解きミステリだけでない、そういう異質な二人の成長物語としても楽しめる良作。



魅力的なキャラたちと優しい世界

主人公二人の生い立ちや、”人とは違うものが見えてしまう”ということから生じる軋轢はともすれば物語を暗いものにもっていってしまいそうになる。
そもそも探偵ものって人が死んだりして、暗いのよ。やっぱり。
けれど、この作品は主人公を含め周りの人たちが「まっすぐした気持ちのいい性格」をしていて、読者の気持ちを軽くしてくれるというか。
重いテーマを含む本作が、コメディチックに楽しめ、物語が明るく優しい。
そういう一つ一つが読みやすいなーと。
少女漫画初心者にも安心しておすすめできる。

女の子キャラも可愛いから、萌勢にも勧めやすい。
藤島千代ちゃんかわいいよ。空回りがすごくて。
でもやっぱり主人公コンビのかっこよさと可愛さが至高。
特にね、左右馬がとある事情から濡れ衣を着せられて逮捕された時、それをなんとか晴らそうと浦部鹿乃子が奮闘する回の鹿乃子ちゃんな。
あと、鹿乃子の本当に些細な所作から彼女に刺さった小さな棘を見抜いて、それとなく前を向けるように誘導していく左右馬のエピソード郡がいい。マジでかっこよすぎる。惚れるわ。
その左右馬の与えてきた勇気の積み重ねがあってこそ、左右馬逮捕エピソードの鹿乃子の奮闘が際立つわけですよ。


男キャラがメインもサブもすっごくキュンキュン来る

やっぱココは推しておきたい。
謎と自愛に満ちた自称探偵のライバルであったり、真面目を一直線に抉らせた信頼と安心の親友キャラだったり。
男衆のキャラクター構成が非常に良く出来ている。
突飛ではないんだけど、すごくキャラ立ったイケメンたちにキュンキュン来ましたね。
探偵の親友、端崎がすごく好き。
真面目であろうとして、真摯であろうとして、それをなるだけ実行しようとする姿にしびれます。
そしてやっぱり左右馬との絶対的な絆がね。
お互いを信頼し、でももたれかからない関係がよかった。
どんな話を聞いたとしても、嘘かホントかも分からないとしても、確実に信じ続けられる相棒同士ってのが素晴らしい。





ごまかしと屁理屈のレトリックで解き明かす謎解き

”嘘”がわかるので、犯人はすぐに分かるのですよ。
でも、謎解きはそこから。レトリックもそこから。
前提として能力がバレることを鹿乃子は嫌がっているし、知られてしまうと彼女を利用しようとするあまり良くないものが寄ってくるだろうという考えから左右馬も鹿乃子の能力をバラすつもりはない。
なのでどうするかというと
「鹿乃子の判定をこっそり左右馬に伝え、その容疑者の言葉の”嘘”と”本当”から起こったことを洞察、さも”いま推理しました”と推理内容をオーディエンスに説明する」という工程になる。
嘘がわかることはバレてはいけない。
それに「嘘をついている」とただ言っても信じてもらえない。
なので、「嘘をついているから」が証拠にはならない。
だからこそ、推理や探偵の枠組みを使ったペテン師的機転を楽しめる作品になっている。
ほんとうに大事なのは”嘘をついている事実”ではなくて、”その言葉が、なぜ嘘である必要があるのかという事情”なんです。
その”なぜ”を解いていくストーリー展開になってます。

丁寧な成長物語がいいよね

嘘がわかると言っても「なぜそんな嘘をつくのか」はわからないわけで。
事実はわかってもその裏が分からない鹿乃子は、子供の頃からそのギャップに悩み、人間関係を壊してしまい、自分の力を恐れていたわけですよ。
それが、探偵祝左右馬との出会いで、「なぜ」が(正確には”なぜ”のほうが大切なんだということが)徐々に分かるようになっていって。
心の変遷が丁寧かつ、関係性の構築が一つ一つさり気なく散りばめられているのがとても印象的でした






ということで、言葉をいくら巡らせても一読には敵わないので。
もし興味が出ましたら少女漫画と忌避せずに
繊細なストーリーと、登場人物の丁寧な描写が心に響く
レトロモダン探偵モノ 「嘘解きレトリック」

嘘解きレトリック 1 (花とゆめコミックス)

嘘解きレトリック 1 (花とゆめコミックス)

おすすめです。


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