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citrussinのチラシの裏

ゲームや読書感想、日々のことを適当につづる日記。TwitterID @sinensis197

おすすめラノベ感想:ふとしたキッカケから関係が移り変わる青春を甘酸く描く、久遠侑「近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係」は、私もこんな青春を過ごしたかったと思ってしまったTHE正統派ラブストーリー。

買って読んだら、キュンキュンしながら一気に読み終えたので、感想記事。
昔ライトノベルの一大ジャンルであった「”等身大、どこにでもいる、普通の”学生男女が青春の恋をする」という普通の恋愛ものが、最近はみません。
ハーレム、バトル、成り上がり、などなど。やはりキャッチーで、ワクワクする系の話が多いです。
それはそれで楽しいし貪るように読んでいるのですが、多感な時期の恋物語というのが少ないのは残念であり、”こんな青春をおくりたい”と思わせてくれる文章の作品に出会えないのは寂しくあります。
ですが、久遠侑「近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係」は、間違いなくそんな等身大の若者の恋愛を描いた、、パルフェ ショコラ second brewで言うところの”そんなつまんない恋”と申しましょうか、甘酸っぱく、切なく、淡く、尊い、”こんな青春をおくりたい”が詰まっていました。

近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係<近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係> (ファミ通文庫)

近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係<近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係> (ファミ通文庫)

おすすめ。
高校の男の子と女の子が惹かれ合い、反発しながら、恋していく。
そんな作品が読みたいならば、ぜひ気にして欲しい一作。



あらすじ

父親と死別し、兄は大学院入学を機に一人暮らしを始め、母と二人で暮らす普通の高校生坂本健一。
言葉少ない彼は、他人との距離に悩み、友達が少なく、でも気の許せる仲間と学校生活をエンジョイしていた。
しかし、ある日母から「遠い親戚の女の子:和泉里奈が短期間居候することになった」と聞かされる。
駅に迎えにいった彼を待ち構えていたのは、可愛らしく、控えめで気遣い屋の女の子。
同じ家で、同い年の”かなりかわいい”女の子と一緒に暮らしていくことになる。
一緒に暮らす内にどんどん彼女に親しみを覚えていく健一。でも、里奈の女子校育ちの無防備さや可愛らしさは、健一にとって初めての生々しい思春期の性を意識させることとなる。
そんな思春期の心に翻弄される彼に、更に幼い頃からの腐れ縁、森由梨子に同居のことを知られてしまい、彼女との距離感にも微かな変化がもたらされることに――。
多感に揺らめく十七歳を映し出す、恋愛ストーリー。


健一は同居している里奈とどんどん親密になり、彼女を家族として好きなのか、恋愛相手としてスキなのかわからなくなっていきます。
しかも、家族同然の彼女に欲情するのはどうなのかといろいろ悩んでしまうわけです。
若いなぁ。男の子だなぁ。

で、さ。初っ端から明かされるので、別に問題ないと思って言いますが。
森由梨子ちゃんはね、健一のことがスキなんですよ。
だから、里奈のことを知って焦るわけです。彼は、自分をどう思っているのか。自分はこのまま指を咥えてみているだけなのか。
中々男らしい由梨子ちゃんの女の情と、性根の良さ、思い切りの良い奮闘に萌狂い悶ました。
揺れる恋心と頑張る女の子ってこんなに可愛いのです!!

この三角関係がすごくいいですよね。
上下巻完結ということも相まって一気読みしました。非常にキレイにまとまった恋愛ものです。

キッカケから変わっていく近すぎた関係

タイトルの”近すぎる”と”遠い”はこの3人の関係を如実に表しています。
健一にとって、物理的に”近すぎる”里奈は、しかし女の子という未知の”遠い”存在です。
そんな彼女を自分の中でどう扱っていいのか、彼は非常に悩んでしまうわけで。
近すぎる、けど遠い存在。それに悩んでしまう。
女の子が非常に遠いという表現はすごくよくわかりますねー。
高校生の思春期の心のゆれが上手く表現できていると思います。

更に健一にとって、幼馴染の由利子との関係はまさに”近すぎ”ました。
彼は由利子を女の子ではなく、親友としてみていましたから。
なんでも共有して、なんでも知ってて、信頼できる関係。
それが、里奈との同居を機に崩壊するわけです。
幼馴染の彼女は”かわいい女の子”だったんだ!!
彼の衝撃は凄まじいものでしょうね。
一気に遠くなる親友。
今のままではいられない。強制的に変わっていく関係性にドキドキしました。

終始徹底した丁寧描写

キャラクターの描写や、健一の心の変遷が丁寧だなーと印象に残っています。
題材がありふれていて、バトル物やキャラクターハーレムもののような激しい浮き沈みイベントを起こしにくい分、非常に行間を丁寧に描いています。
キャラの動作や態度、心理描写を丁寧にすることで、一つ一つの些細なことでもスルッと感情移入できました。
ああ、これは健一くん大変だわ。と。
彼がドキッとした彼女たちの魅力がことごとく胸に来ますね。

17歳の青春な懊悩

里奈と素早く仲良くなれる自分の男友達に、健一は嫉妬してしまったり、そのことに罪悪感や嫌悪感を覚えたりするんですよ。
わかるわー。
恋人じゃないし、誠実でもないんだけど、知り合いにトラれたくない。自分のものとしていたい。
自分勝手で、狂おしい情動が17歳男子高校生の心を焦がします。
由利子との関係がわからなくなったり、不誠実だと思いつつも結論を先延ばしにして逃げたり、かと思えば男の親友を疑ってみたり。
自分勝手で汚らしくて、全然”かっこ良くない”自分を延々と見せつけられてしまう健一。
その中でも、答えを頑張って出していくというのが思春期の青春らしくて素晴らしい。


脇で友達の恋物語も進行するのですが、それを見て「あいつはああなのに、自分は何をやっているんだろう。。。」ってなってしまうのがすごくよくわかって切なかったですねぇ。
誠実でいようとすればするほど現実との摩擦が大きくなって。
正しいことなんて無いのに正しさを追い求めて。
ああ、青春だよなぁ。。。。



魅力的な女の子との甘酸っぱい関係

里奈も由利子もすっごく可愛い。
描写が丁寧だから、過不足なくその可愛らしさを受け取れます。
私、由利子ちゃんの可愛らしい嫉妬と真っ直ぐな性根が大好きです。
最近はさ、ライトノベルのキャラクターって定型化された萌タグを便利に使いすぎなんだと思うんですよ。
それはそれで好きなんだけどね、でもそればっかりじゃあきてしまうのです。
やっぱりキャラクターには背景が有り、人間である以上型に収まらない多面性を持つべきだと思うのです。
その意外性やギャップ、バックボーンに深みが出てくるわけで。
要するに、女の子は型にはまらず、やっぱり”ずるい”ほうが素敵だと思います。


私達の見ている彼らはたった一面に過ぎず、ジョハリの4つの窓の2つしか覗くことが出来ないのです。
ふとした瞬間に見せた「私達の知らない彼女らしさ」というものに、幻滅ではなく愛おしさを感じる。
それが作者の力の見せ所なんじゃないかなーと。

総評

失った青春を、懐かしみながらも「こんな青春を過ごしたかった」と思わせてくれる、旧き良き正統派恋愛ストーリー。
多感で、不安定で、無防備な17歳の思春期の男女が、不安に揺れながらも一欠片の勇気とともに前に進む普通の恋物語。

たまには”つまんない恋”なライトノベル読んでみませんか。
久遠侑「近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係」 おすすめです。

近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係<近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係> (ファミ通文庫)

近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係<近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係> (ファミ通文庫)