citrussinのチラシの裏

ゲームや読書感想、日々のことを適当につづる日記。TwitterID @sinensis197

おすすめコミック:哲学的な機転が面白い、藤栄道彦の哲学系グルメコメディ”最後のレストラン”はキャラもストーリーも面白い良作料理コメディ

「幾千年も昔から、手を取り合うことを諭してきたと言うのに。いまだ人は争い手を取り合おうとすらしない。私が説いてきた言葉は無意味だったのか・・・・」
「あなたは、、、あなたは、毎日シャワーを浴びて、食事を取りますよね?」
「そうだな」
「毎日洗って、でも汚れて。食べても食べても次の日にはお腹が空いて。でもそれを誰も無意味とは言いませんよね。そういうものなんじゃないでしょうか」



第9巻キング牧師エピソードから抜粋

主人公やその周りが作中何らかの高い能力を持ち、それによって問題を解決していくストーリー展開を好む藤栄道彦さん。
「コンシェルジュ」シリーズを代表とする漫画家です。

コンシェルジュ 1

コンシェルジュ 1

特に主人公やその回りにいる人たちの一風変わったキャラ付けややり取り、会話間に深い意味をもたせ考えさせるストーリーに定評があります。
コンシェルジュシリーズはお仕事物や、問題解決奮闘物としても非常におすすめな一作です。


という、藤栄さんが、コンシェルジュシリーズ以外にも、料理&トンチ&哲学考察系なコメディ漫画を書いておられます。
藤栄道彦「最後のレストラン」

最後のレストラン 1巻 (バンチコミックス)

最後のレストラン 1巻 (バンチコミックス)

NHK BSプレミアムでドラマ化もしましたし名前を知っている人もある程度いるかとも思います。

ダメ人間が機転と言い訳でその場をしのぎ、それが結果知恵者の悟りを開くというコメディと哲学系の面白さが絶妙に混じり合った一作です。







あらすじ

「ダメ人間の要素を全部持っている」
知り合い誰もがそう言い表す男は、レストラン「ヘブンズドア」のオーナー兼シェフの園場凌。
実際そのとおりであり、彼自身も自分のことをそう思っている。
料理の技術や発想力は高いものの、根っからマイナス思考。更に無気力。極めつけは卑屈な性格とプライドの高さ。
自他共に認めるダメ人間。厄介な人というのは彼のためにあるだろう。
しかし、名前の通り”その場凌ぎ”の言い訳と機転は非常に効く上、最も厳しいと言われた帝都ホテル厨房の料理修行を全てこなした不思議な人物だ。

ところで誰も知らなかったことだが、父から受け継いだこの「ヘブンズドア(天国の扉)」は不思議なチカラを持っていた。
歴史上の著名人が死の間際、何故かこのレストランにワープしてくるのだ。
豪胆、冷徹、悲哀や苦悩。奇妙な人から普通の人、さらには狂信者まで。
あらゆる艱難辛苦や喜びを噛み締めてきた彼らの無理難題のような注文を、凌は従業員と共にその生命の最期にふさわしい料理を機転を利かせて作っていく。
さて、今日の注文は何でしょう?


この主人公の名前にもなっている”その場しのぎ”の機転が、言いようもない光となって哲学的な面白さが生まれている作品です。
言い訳とその場しのぎで口にするからこその真理がそこにはアルような気がして。
ちょっと考えさせられたりするのがいいですね。
解釈とは口にした者ではなく、聞いたものの心にこそ生まれるとはよく言ったものです。

全体的に主人公はダメ人間ですが、クズではないです。いや、、、、、ちょいクズかもしれん。
面倒くさがりな上に、プライドが高く、料理に関して「できません」と言いたくない彼は、客の無理難題にまるで悟りのような一言や機転を言い訳に使ってしまうがために、登場する偉人の多くは彼をヘブンズドア(天国)のオーナー(神)と認識してしまいます。
そこら辺の勘違いものとしても面白いわけですが、主人公褒め称え系が嫌いな人はちょっと注意。
まぁ、フツウに現代の人たちは、凌くんを屑だとみなしているので、主人公褒め称えともちょい違う気がしますが。

  

藤栄流の偉人たちと、料理たち

多くの偉人が登場しますが、皆人間臭く、いきいきと描かれているのが面白い。
一般的に教科書で語られているイメージと異なり、彼らのエピソードを読んだ上で藤栄さんが想像した偉人像が描かれています。
ギャグ調に紹介される人もいれば、シリアスにという人もいて。
ジョジョ好きなのか、パロディも散見されますね。

更に、作中で有賀千恵が言っているように「食べ物や料理に意味をもたせる」という展開に力を入れており、グルメ考察漫画として筋が通っております。
時代考証も作中様々な表現として取り入れており、例えば漫画評論家新保信長さんは”食材や調理法に関する時代考証的な薀蓄を興味深い”と評論したそうです(wiki知識)




主人公の周りにいる人達も何らかの才能と強烈なキャラクター性を持つ

これもコンシェルジュシリーズからの習わし(?)で、主人公の周りも能力の高い人達で溢れています。
全ての世界中の言語で話せ、偉人のエピソードや概略を即座に説明できる、この作品のキーパーソン「前田あたり」
根っからのポジティブ&コミュニケーション能力を誇る「有賀千恵」
この二人は、コンシェルジュ作品でも似たような人がいましたね。
こういう人がいるから話を広げたりつなげたりがしやすくなります。

更に、ある理由から元の時代に帰れなかった「ジャンヌ・ダルク」が途中から従業員となり、大きな才能と多大なる問題を抱える凌の姉代わり「みやっこさん」や、意図的にシステムを理解した前田さんが返さないようにした、我らが安徳天皇「トキくん」など、様々なキャラクターが現れます。

この作者の定形キャラの造形結構好きなんですよね。
お馬鹿なボンボンとか、ショタとか、笑顔が怖い姉さんとか。
王道を付きながら、意外と人間臭い多種多様なキャラ作りで。
ストーリーを広げるのも一役買ってますしね。
犯罪者の偉人を登場させるために出てきた茂野月好美とか、天啓ですね。


あとね、恋する女の子たちがかわいい。
この人の女の子勢はすごく可愛いです。
恋物語が女の子をもっと魅力的にさせていきます。
コンシェルジュの鬼塚小姫とかよかったよ、本当に。
続編「コンシェルジュ プラチナム」の顛末でホッとしました。



優しい世界

嫌味というか、悪意を持ったひとがね、メインにはいないのよ。
主人公たちは「いいひと」なんですよ。
心が暖かくなるというか、見守って行きたくなるというか。
主人公を取り巻く環境が素敵(居心地いい)ってのは重要なファクターだと思います。
安心して読めるよね。

たまに敵役?として出てくる人たちもコメディ調で、どこかバカバカしくて。
荒んだ心には心地良いのです。



ということで。
偉人とグルメと啓蒙を開く言い訳をふんだんに織り込んだ傑作コメディ「最後のレストラン」
寝る前にでも読んでみませんか?

最後のレストラン 1巻 (バンチコミックス)

最後のレストラン 1巻 (バンチコミックス)


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