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citrussinのチラシの裏

ゲームや読書感想、日々のことを適当につづる日記。TwitterID @sinensis197

おすすめミステリ。ホラー✕ミステリの極上エンタテイメント。どんでん返しと伏線に満ちた、今邑彩の「”貴島柊志”シリーズ」を読みきったので感想。

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ところで、この作品"貴島柊志”シリーズの一作目だそうで。
その後ホラーミステリとして続いているようで。
恐ろしいほど巧みなレッドヘリングで騙された身としては、これはこのシリーズを読みきらねばと急いで全巻買ってきた。
せっかくなのでシリーズの短文感想も記事にしておこう。

1作目 「i 鏡に消えた殺人者」

ある日女性ミステリ作家が殺された。密室となった死体現場に残った痕跡はその全てが「犯人は鏡の中に逃走した」と語る。
更にその女性作家が書いていた新作は、彼女自身が過去に犯した過ちを題材に鏡の中から殺人鬼が殺しに来るという内容で。。。。

i(アイ)?鏡に消えた殺人者? 警視庁捜査一課・貴島柊志 (光文社文庫)

i(アイ)?鏡に消えた殺人者? 警視庁捜査一課・貴島柊志 (光文社文庫)


詳しい感想は前回記事参照。
おすすめミステリ:今邑彩の貴島柊志シリーズ第一作「i(アイ)鏡に消えた殺人者」を読んだので感想。とてもきれいにまとまった良作で、初心者にこそおすすめ。 - citrussinのチラシの裏
作者いわくもっともよく書けた作品だそうで、その通り始終ドキドキハラハラの連続だった。
非常に綺麗に貼られた伏線と、最後の2段どんでん返しに騙された方も気持ちよくなれる良作。



2作目 「”裏窓”殺人事件」

事故で足が動かなくなり、外の景色を双眼鏡で覗くことと空想が趣味になったとある少女がいた。
ある日起きた、向かいのマンションからの女性の転落死。
密室であったため自殺か事故かと判断されたその事件は、同時刻少女が見ていた男の影により混迷を深める。
そしてその証言をした後、少女の家に無言電話が鳴るようになり。。。。
ウィリアム・アイリッシュ原作のサスペンスミステリ映画”裏窓”をモチーフに描かれる密室トリックの全容やいかに

「裏窓」殺人事件 警視庁捜査一課・貴島柊志 貴島刑事 (中公文庫)

「裏窓」殺人事件 警視庁捜査一課・貴島柊志 貴島刑事 (中公文庫)

どちらかと言うと、ミステリよりもサスペンス・ホラー寄り。
少々複雑なプロットなので、もしかしたら慣れてない人は相関図を把握しづらいかも。
無言電話と別件の撲殺事件が繋がり、動けない少女の身がどんどん危険になるのにドキドキした。
相変わらず仄めかし方が上手いテキストで、 よくわからないけどとても不安になる大切な何かに気づけていない自分というのが楽しめた。
どんどん迫ってくる正体不明の恐ろしい何かと、現実に折り合いがつけられる推理のコントラストも素敵。
特に傍点でクリティカルな気付きを強調するシーンが多いのだが、「なぜそれがクリティカルなのか」を気づいたときのぞくぞく感が堪らなかった。

ただ作者も言っているように、最後のエピローグは蛇足かねー。
下手にホラーにしすぎようとして本題がそれてしまった感がある。


3作目「”死霊”殺人事件」

奥沢は困っていた。友人の上山と立ち上げた会社が潰れそうなのだ。
そこで彼は「妻を殺して慰謝料を得よう」と、考えついたアリバイトリックを不倫相手に持ちかけた。
「大丈夫だ、上山なら絶対協力してくれる。あとは君さえ了解してくれればすぐに大金が手に入るんだ」
さて幾日か後、奥沢の自宅で奥沢の妻、上山、そして奥沢の3人の死体が発見される。発見者はほんの数分前に奥沢本人を家まで送り届けたタクシー運転手だ。
なぜ3人全員が死んだのか。
その殺人現場を調べれば調べるほど「殺され埋められた妻が生き返り、上山と奥沢を殺して再度息途絶えた」と語っていた。
果たして本当に死霊が夫に復讐を果たしたのか。3度めの奇怪な密室に貴島柊志が挑む。

「死霊」殺人事件 警視庁捜査一課・貴島柊志 (光文社文庫)

「死霊」殺人事件 警視庁捜査一課・貴島柊志 (光文社文庫)

んー、結構色々なところで使われているトリックだから、ミステリ読みや察しのいい人なら途中でトリックの大筋はわかる。
当然すべての顛末を読みきれるかと言う楽しみ方もできるが、どちらかと言うと、ミステリというより2時間サスペンス劇場的な雰囲気。
そういう意味でいうと軽いミステリ調のサスペンスドラマとして楽しめる一作。
でも、全ては読みきれなかったなー。特に死霊の意味と登場人物のクズさを。

そして、やっぱりこのシリーズはどんでん返しがメインだなーと。
死霊殺人事件は6章で解決し、”アレ?大きな謎が残ったままやで?”となってからの7章。
その章題は、「まだ終わっていない」
これこれ。やっぱこのドキドキ感が癖になる
とはいえ、わかりやすい伏線とプロットなのでだいたい察しがついてしまった。

逆に言えばプロットをシンプルにして話はわかりやすくし、人間関係相関の複雑さをメインに置いたと考えると読みやすい。
最後のページで”死霊”の意味がわかったときのぞくぞく感はたまらないです。




4作目 「繭の密室」

「妹はあずかった」
唐突になった電話が、誘拐事件の始まりだった。
そして別の場所では密室から靴を履いたまま落下死した奇妙な事件が発生。
果たしてこれは他殺なのか。
落下死事件を追う中で、容疑者と誘拐事件との繋がりが明らかになり。。。。。

繭の密室 警視庁捜査一課・貴島柊志 貴島刑事 (中公文庫)

繭の密室 警視庁捜査一課・貴島柊志 貴島刑事 (中公文庫)


作者いわく、「3作で終わるところをファンの声援を受けてのアンコール」とのことで。
ホラー要素はなくなり、人間関係が交差するサスペンスドラマ色が強くなりました。
とおもったら、土曜ワイド劇場で本当にドラマ化されたそうで。
もしかしたらこれだけは知っているという人もいるかもしれない。
ファン向けということもあり、1作目に出てきた人が何人か再登場。先に鏡に消えた殺人者読んどきましょう

連続で読んできたせいである程度伏線の張り方に慣れ、種明かし前にすべてのトリックを読み切ってしまったのでトリックについては割愛。
でも相変わらず単純なトリックをドラマに落とし込むのが上手いっすね。
さてこの作品の本題は人間ドラマなので、一番読まなくてはいけなかったのはトリックではなく動機と”繭の密室”とはなんぞやかね。
とても大きな狂気が最後に顔をちらっとだけ覗かせます。
(どうもワイド劇場ではキャッチコピーでネタバレしてたようですが)
んー、こういう狂気はな~。意外と現実でもよくあるよねー。
繭の外が危険だと誰が決めるのか。密室とは外的から見を守れるけど視野が狭くなるんですよねー。
そう考えるとエピローグだけでなく、落下死の真相を絡めて”繭の密室”と付けたのかなーと深堀したくなる。
4作目は気色の違うドラマ仕立てでしたね。

総括

ゾクゾクする最後のひっくり返しを楽しみに、一気に読み終えてしまいました。
個人的には1作めがストーリーのわかりやすさと伏線のきれいな張り方からしてベスト1かな。
一番ゾクゾクしたのは死霊。
あの展開は問答無用で寒気が走る何かがありました。
作者の今邑さんは2013年に亡くなられており、このシリーズが続くことはないというのが少々残念。
他のミステリも出しているそうなので、漁ろうかと思います。




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